イフリートは、イスラム教によると、人間よりも2000年も前に創造主によって「火」と「風」から創られた魔神だとされる。また「ジン」(魔人、悪魔、精霊)の一種であるとも言われている。ジンの存在はクルアーンも認めており、ジンという題目のスーラ(章)があるほど有名である。神のような存在とも思えるジンだが、ソロモン王には抵抗する事が出来なかったと伝えられている。彼はジンを意のままに操り、神殿を建立した時にも数多くのジンを動員したと伝えられている。
余談ではあるが、炎の魔人、炎の精霊などとして広く知られるようになった事の発端は「ダンジョンズ&ドラゴンズ」というテーブルトークRPGに使われ、「炎属性の精霊」とした事が大きく影響しているであろう。本来は炎という属性だけに限った悪魔ではないのだが、イフリートやジンは、煙の無い火から生まれた種族と伝えられているため、こうした設定が炎の精霊として定着していったのではないかと思われる。ついでに「アラジンと魔法のランプ」に登場する「ランプの精」と「指輪の精」は『イフリート』であると云われている。
話は戻って、姿はあらず、目に見えぬとされる。姿を現す時は煙・雲の如く渦巻く気体となって現れるほか、人間、蛇、ジャッカルなどの姿などもあったとされている。中でも巨人の姿で現れたとの報告が多く記されている。知力や体力、魔力と全てにおいて人間より優れていたとされている。色々な魔法を操る事が出来たとされ、中でも、炎を自在に操り、炎に関る特別な力を持つ強力な悪魔だとされる。イフリートを召喚した者には、魔法の力によって様々な恩恵を授かったと伝えられているが、その一方で、性格は獰猛・短気であるがゆえ、非常に気性が荒く、自分の気に入らない相手であった場合は即座に命を奪うという一面も併せ持っているとされている。
イフリートはジンの一種であるが、ジンの最高位がイブリースであるとされている。イブリースの下には階級があり、上から、マリード(マーリド・マリッドとも云われる)・イフリート・シャイターン・ジン・ジャーンの5階級となっている。また、水・火・風・地の4大元素の属性ごとに、水のマリード、火のイフリート、風のジン、地のダオ、と呼ぶこともある。では、なぜ悪魔、魔神などと呼ばれるのかであるが、資料によると、創造主が後に創られる「土」と「水」からなる存在である人間を創られた時に、並んでいた天使達に、[跪いて拝めよ」と言った際に、イブリースはただ一人それを拒んだがゆえ、天界から追放され、悪魔の大王となったと書されている。
種類は実に多く、性別も男と女が存在しているとされている。また、人間と同じで善人と悪人がいるように、ジンもまた善人と悪人があり、ムスリムと非ムスリムがあり、人間と同じように救いを求めるものもあれば、ジャハンナム(地獄)に落ちるものがいたとされる。時により人間に取り憑く事があり、悪の心を持つジンに取り憑かれたものは気が狂い正気を失ってしまうとされている。その逆に、善の心を持つジンに取り憑かれたものは聖者となり、人々や社会に益なるものを与えるとされている。
人々や社会に害を与えるものから、悪戯程度で終わるもの、場合によっては人間の命を殺めるものまでと、種類は幾多もあったとされている。人を助けたりするイフリートも居たという事から、この種族は善と悪のある種族だという見方もある。
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