ベルフェゴール、七つの大罪に比肩する悪魔として有名なこの悪魔の名をゲームやアニメなどで見たことのある人も多いのではないだろうか。そこで今回は、怠惰、好色を司るこの悪魔について解説したいと思う。
ベルフェゴールも、その他の悪魔同様に元は神様であった。モアブという古代イスラエルの近隣に位置した街にて、山の主神「バアル・ペオル」として崇められていた。バアルとは慈雨と豊穣の神バアルを指すのかどうかは定かではないが、地域神として崇められていたのは確かである。そこにキリスト教の一神教政策の広がりを受けて、バイブル等にて卑小化されていき、悪魔とされたのである。
ではどのように卑小化されていったのか。旧約聖書の中にその一片が語られているので紹介しよう。モーセ率いるイスラエル人がカナンの地を目指す途中にモアブの街に訪れた時の話である。彼らが訪れた時、ちょうどモアブの人々がバアル・ペオルに供物を捧げる最中であった。そこで、モアブの娘たちはイスラエル人を招待し、イスラエル人に神としてバアル・ペオルを紹介し、食事を共にしたのである。この出来事に激怒したユダヤ教の唯一神ヤハウェは、この食事に参加したイスラエル人含めたすべてのモアブの民、そしてバアル・ペオルを処刑するようモーセに命令し、2万人以上が犠牲になったのである。この事件をペアルの事件と呼び、この後バアル・ペオルは悪魔となったのである。
ベルフェゴールとは、大悪魔ルシファーの副官にして、悪魔としては珍しい女性の悪魔である。
ある時、悪魔界で「幸福な結婚とは本当に存在するのか」という議論が生じた。そして実際にそれがどうなのかを確かめるため、悪魔界から派遣されたのがベルフェゴールとされている。彼女は様々な結婚を観察したが、結局「幸福な結婚」をみることはなかった。そこから人間嫌いになったとも言われている。
ベルフェゴールは一般に、日本の角と牛の尻尾を生やした醜悪な大男の姿で、便座に座っている様子を想像する人も多いかもしれない。これは、ラビの伝承などで豊穣の神バアルが転じて排泄物を捧げられた魔人として描かれていることから、この絵が広まったのである。
しかし、元をたどれば、ベルフェゴールとは女悪魔であり、好色を好むことから、女性の性への欲求をもたらすとされ、よく妖艶な女性として描かれている絵が本来の姿であるとされている。
ベルフェゴールは、キリスト教にて設定された七つの大罪の一つ、怠惰を司る悪魔とされている。これは、16世紀にハンス・ブルクマイヤーが七つの大罪と悪魔との関連付けた版画を作成したことがきっかけとされており、そこからベルフェゴールの名は世界的に一気に広まったのである。
好色の女悪魔、怠惰を司る大悪魔、また豊穣の神が堕ちて排泄物の魔人となった、など様々に語られるベルフェゴールは、現在の物語にも数多く登場する。特に、フランスではルーブル美術館を夜な夜な徘徊する魔人として有名であり、それを題材にしたドラマや映画が数多く作成され、どれも大ヒットを記録している。そのことから、フランスでは「地獄のフランス大使」などと呼ばれることもある。
いかがだっただろうか。ベルフェゴールは、様々な艶女に化けて世の男性を誘惑するとされる。それは上記したイスラエルの民を誘惑したことからきているのだが、もしかしたらあなたの周りにいる綺麗な女性もベルフェゴールの化身かもしれない。
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