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カブラカン(Cabracan)とは、マヤ神話に伝わる怪力の巨人であり、怪鳥ヴクブ・カキシュの二番目の息子である。父や兄と同じく傲慢で邪悪な性質だったため、双子の英雄神フンアフプーとイシュバランケーによって倒されたと云われている。

【概要】
カブラカン(Cabracan)の名は「地震」を意味し、山々を容易く突き崩すほどの怪力の巨人であり、自身を「山を覆す男」と称していたという。彼は、怪鳥ヴクブ・カキシュとその妻チマルマットの間に生まれた二番目の息子であり、物凄い怪力の持ち主であったが、父や兄と同じく傲慢で邪悪な性質であった。
高地キチェ・マヤの聖なる書物『ポポル・ヴフ(Popol Vuh)』に、カブラカンは邪悪な巨人として登場するが、その中で双子の英雄神フンアフプー(Hunahpu)とイシュバランケー(Ixbaranque)によって倒されている。
この双子の英雄神は、怪鳥ヴクブ・カキシュの一家の傲慢さに怒り、この一家を滅ぼすことを決め、はじめに父ヴクブ・カキシュを殺す。続いて長男シパクナーを殺し、最後に次男カブラカンを殺すために猟師を装いこの巨人に近付くのである。双子は石膏を仕込んだ鳥肉をカブラカンにご馳走し、カブラカンが弱ったところで縛り上げて地中に埋め殺したと云われている。

【双子の英雄のカブラカン退治】
怪鳥ヴクブ・カキシュとその長男シパクナーを倒したあと、双子の英雄神フンアフプーとイシュバランケーの前に、天の心(フン・ラカン)である3神―カクルハー・フラカン( 銀河)、チピ・カクルハー(雨)、ラサ・カクルハー(太陽)―が現れた。彼らは双子の英雄神に邪悪な巨人カブラカンを東の方角へ誘い出して殺すように命じたという。

あるとき、カブラカンがいつものように自分の力を誇示して、手当たり次第に山を揺るがしたり崩したりしていると、2人の若者が声をかけてきた。
実はこの若者は双子の英雄神フンアフプーとイシュバランケーで、2人は貧しい猟師を装ってカブラカンに近付いたのである。そして、山を揺るがすカブラカンに対して、暁の光で赤く染まるところに周りの峰々を見下ろすほどの巨大な山があることを教えた。それを聞いたカブラカンは、自分の力を試すために、その巨大な山を揺るがしてみたくなった。
そして、2人の猟師がその山への道案内をつとめ、3人は連れだってその山へと向かうことになったのである。カブラカンを真ん中にして3人は愉快に話しながら歩いたが、道中、双子は吹筒(古代マヤの武器。息で土の弾を発射する)で鳥を射落とし、獲物をしとめながら歩いた。その腕前があまりに見事だったので、カブラカンはすっかり感心してしまったという。
そして、目的の山へ着く前に、双子は火を起こして捕まえた鳥を料理することにした。双子は、捕まえた鳥のうちの1羽にこっそりティサテ(石膏)を塗り込み、何食わぬ顔で他の鳥と並べて焼きはじめた。鳥が美味しそうに焼けると、お腹を空かせたカブラカンはたまらず、鳥を1つ分けて欲しいと双子に頼み、美味しそうに焼けたティサテ(石膏)入りの鳥をもらってそれを食べた。
食事を終えた3人は目的の山に向かって歩き出したが、歩みを進めていくうちにだんだんカブラカンの具合が悪くなってきた。鳥に塗りこまれたティサテ(石膏)のせいで、カブラカンは手足の力が抜けてふらつくようになり、山に着いたときには山を覆すどころか、すっかり動けなくなっていた。
双子の英雄神は、動けなくなったカブラカンの腕を背中に縛り付け、首と足を一緒に括って、そのまま土を被せて埋めてしまったという。
こうして、双子の英雄神フンアフプーとイシュバランケーは、傲慢で邪悪なヴクブ・カキシュ一家を滅ぼしたと云われている。