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マヒシャ(Mahiṣa)とは、インド神話に登場するダーナヴァ族に属するアスラ(阿修羅)の首領であり、マヒシャースラ(Mahiṣāsura)とも呼ばれる。神々を脅かす強力なアスラで、一度は神々を天界から追放することに成功したが、女神ドゥルガーによって倒されたと云われている。

【概要】
マヒシャは、ダーナヴァ族の父ラムバ( Rambha:水牛から生れ落ちたと云われる)の息子であり、マヒシャ自身も自在に水牛の姿に変わることができたという。マヒシャ(Mahiṣa)の名は「水牛」を意味し、アスラ王としてマヒシャースラ(Mahiṣāsura:マヒシャ=アスラ)の名で語られることが多い。
ヒンドゥー教のプラーナ文献『デーヴィー・マーハートミャ(Devīmāhātmya)』においては、マヒシャは神々を脅かす恐ろしいアスラ王として登場し、女神ドゥルガー(Durgā)によって殺されている。ドゥルガーとは、偉大な戦士として誕生した女神であり、その名は「近づき難い者」を意味する。シヴァ神の妃パールヴァティーと同一視される女神でもある。

【女神ドゥルガーのマヒシャ退治】
アスラの首領マヒシャは、瞑想を行うことによってブラフマー神(梵天)から「いかなる男にも神(deva)にも敗北しない」という力を授かる。(この場合の「神(デーヴァ:deva)」は男神を意味し、女神は「デーヴィー:devī」である。)
絶大な力を手に入れたマヒシャは、アスラの軍勢を率いて天界を攻め、神々の王インドラをはじめ多くの神々を打ち負かし、彼らを天界から追放してしまった。
天界を追われたインドラ率いる神々が、シヴァ神とヴィシュヌ神の元を訪れて窮状を訴えると、シヴァ神は怒りによって顔(一説によると、口)から灼熱の光を放ったという。同様にヴィシュヌ神や他の神々の顔(口)からも灼熱の光が放たれ、その光の中から美しい女神ドゥルガーが生まれ出たのである。
戦いの女神として生まれたこの女神は、多数の(10本ないし18本とも1000本とも云われる)腕を持ち、神々はその手にそれぞれ武器と装飾品を授けた。さらに、ヒマラヤの神ヒマヴァットは乗り物としてドゥン(Dawon:獅子もしくは虎)を授け、ドゥルガーはそれに乗りマヒシャの支配する国へと向かった。
そして、女神ドゥルガーは9日間にわたる戦闘において次々とアスラの軍勢を滅ぼし、10日目の半月の夜に、とうとう水牛の姿をしたマヒシャと対峙した。激しい戦闘の中、マヒシャは獅子、象、水牛と次々と姿を変えてドゥルガーに襲い掛かったが、最後には巨大で残忍な水牛の本性を現した。そして、その水牛の首にドゥルガーが槍を突き刺すと、その傷口から人型のアスラとしてマヒシャは再び現れ、ドゥルガーを攻撃し始めた。(因みに、切り落とした水牛の首から出てきたのは、マヒシャの霊魂であるとも云われる。)
しかし、女神ドゥルガーはその偉大なる力でマヒシャにとどめを刺し、これを討ち倒したと云われている。 

【備考】
このアスラ王マヒシャの名は、現在のインド南部の都市マイソール (Mysore)の名の由来ともなっている。
女神ドゥルガーがマヒシャを討伐した地としてマヒシャブール(水牛の町)と名付けられたことから、現在の呼称になったと云われており、この地を首都として14世紀の中頃に誕生した王朝はマイソール王国(1339年-1947年)と呼ばれている。

また、仏教における大威徳明王(梵名:Yamāntaka「死神ヤマを殺す者」)は、別名ヴァジュラ・バイラヴァ (Vajrabhairava 「金剛の畏るべき者」)や、マヒシャ・サンヴァラ (Mahiṣasaṃvara 「マヒシャを押し止める者」)とも呼ばれる守護尊であり、その姿は一般的に水牛に跨る鬼神、あるいは水牛の忿怒相を中心とする多面多腕の鬼神として表現されている。