静岡県富士宮市
嫌な雰囲気があたりを包み、入り口の鳥居をくぐると呪われるという噂がある。
わたしが高校生の時の話で、ちょっと長くなるんですが語らせていただきます。
人穴とは静岡県富士宮市にある、神社と溶岩の洞穴を指します。
富士講という宗教の開祖さまが修行をしたと言われる場所ですね。
地元民であるわたしどもの間では、鳥居を車でくぐると帰り道で事故にあうという噂で知られていました。
あと洞穴の奥はずっと続いていて、昔の武士がここを通って神奈川方面へ逃げ延びたとか言われています。
その時の自分たちは免許を取り立ての先輩に連れだされ夜遊びをするのが日常になっていて、
人穴にもその流れで向かう事になりました。
男性4人女性5〜6人という大所帯で、人穴内部も探検するため懐中電灯やカイロを(内部はとても冷え込んでいるそうなので)
調達して向かいました。ちなみにわたしは女性です。
コンビニで物資を調達し、車で県道を進み人穴に辿り着いたのは深夜2時を回った頃でした。
杉でしょうか、木々に覆われて夜闇では人穴への曲がり角がわかりづらいのですがなんとか間違えず曲がり、
間違って鳥居を通らないように慎重に車をすすめました。
ここで厄介なのが鳥居の位置なんですが、駐車場より手前にあるんですよ、鳥居。
駐車場に辿り着くには鳥居の横にある通路を通るか、鳥居くぐっちゃうかの二択になるんです。
正直、鳥居の噂を知らない人はくぐっちゃうと思います。鳥居ルートの方が楽ですもん。
まあ何とか二台の車を無事に駐車場におさめ、一行はわらわらと降り立ちます。
自称霊感あり、の参加女子一名が『ここはまずい、車を降りたくない』と
しばらくごねましたが一人で置いていかれるのはもっと嫌だったようでしぶしぶ後に続きました。
わたしは彼女に関してはと『ベタだなぁ…』という感想しか抱きませんでしたが、人穴という場所そのものは雰囲気がすごいです。
連れの人数が多すぎて怖くないとお思いでしょうが、そんなことはありません。
真っ暗で懐中電灯なしには何も見えず、あたりは静かで虫の声もしないんですが
葉ずれの音でしょうか、ざわざわ、ざわざわという音は絶えず続いていました。
くたびれた石段を登ります。
お社と洞穴に続く入り口が見えるより先にわたしの視線を奪ったのは沢山の石碑でした。
宗教的なものなんでしょうが、石でできたそれらが並んでいるとまるでお墓のような印象を受けたのをおぼえています。
石段を登り終え境内に上がると前方にお社、右手に人穴への入り口が見えました。
現在はこざっぱりとした新しいお社と観光客用のトイレが作られて少し明るい印象になっていますが
当時は違います。
暗い色の木造のお社に蝋燭が何本か灯り、心細い明かりをたたえていました。
とりあえず失礼のないように(深夜の訪問自体が失礼な気もします)、お社にお祈りしてから洞穴内部を探索しようという話になり
一同きれいに並んでお社に手を合わせます。
お祈りする時皆さん目をつぶると思います。
私もそうしていたんでしょうが(記憶には薄いので)ふと気付くと白い動くものが目に入りました。
確認するとそれは注連縄から垂直にたれているジグザグに折った紙です。
最初、風に揺れているんだろうと何とも思わなかったんですが観察するうちにおかしなことに気付きました。
三本垂れた紙のうち、中央だけが揺れています。
しかも真横に。
風にあおられて曲がったりもしていなく、うまく例えられないんですけど、あれです。
柱時計の振り子のように左右に大きく揺れていました。かなり素早くブレのない動きで。
連れの皆はおのおの大きかったり小さかったりそれぞれに悲鳴をあげていましたが
わたしは不思議すぎて、怖すぎて蝋燭のすべてが少しも風に揺れていないのを一本ずつ確認したあと
『ひっ…』とひき笑いのような声が出たのを憶えています。
洞穴探検は、暫く境内で話し合いをしたのち中止となりました。
何か神様のようなものがここにいらしたとして、怒ってらっしゃるのかもしれないという結論に達しました。
とにかく女子一同びびりすぎて、洞穴の方に近寄れもしないという状態でしたので。
結論が付くと、みな逃げるように車に乗り、その場を後にしました。
いままで生きてきた中ででいちばんこわい体験でした。
わたしが確認した限りでは、洞穴は半地下のようになっており、
入り口から不恰好な岩を何個も組んだような石段で下におりていくかたちのようです。
入り口から見た限りでは、泥っぽい地面にすのこが渡してありそこを渡って行くつくりです。
昼間はいった人の話によるとお地蔵さまのようなご神体?と彫り物、蝋燭が配置されているという話です。
奥はあまり広くないそうです。
ちなみに補足ですが、現在は観光課に問い合わせての内見となるそうなので
お出かけの際はご注意ください。
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