島根県松江市美保関町千酌 枕木山
枕木山の廃ラブホテルは、地元の人間の間では有名な心霊スポットです。
ある人は車を止めてラブホテルに入り、ラブホテルから出ると車が止めた時は逆方向を向いていたり、またある人は昼間にラブホテルに入り、色々な所を携帯の写真機能で撮影しSNSに上げたらラブホテルの玄関口で撮影した写メに幽霊が写っていたりと枕木山の廃ホテルにまつわる噂は絶えません。
そんな枕木山ですが、走り屋の人が多く峠を攻める場所としても有名です。
昔、当時走り屋の友人に誘われ助手席に乗り一緒に枕木山へ行きました。
ひと通り走り、下山ついでに廃ホテルに行こうという話になり車で廃ホテルの入り口まで走ると、廃ホテルの周りを囲むように霧がかかっていました。作りこまれた映像のような現象に言葉を失いましたが、折角ここまで来たのだからと腹を括り廃ホテルに入りました。
すると、私達の他にも別のグループが肝試しをしており、お互い驚いたものの直ぐに打ち解け、話しながら一緒にホテルの中を探索する事になりました。
その内の一人にライターを貸してくれと言われ渡したのですが、ライターが付かないんです。
そのライターは枕木山に入る前にコンビニで購入したものなのに、急に壊れる事もあるのかと言うと、ライターを貸した男性が口を開きました。
「俺もさっき壊れたんだよね」
これはきっと偶然なんかじゃない。背筋が凍ったような気がしました。
恐ろしくなって慌ててホテルから出て、車に戻り下山していると何故か気持ち悪くなってきました。
これは思い込みなのか運転手の運転テクのせいなのか、はたまた何かがついてきたのかと思っていると、まだ下りきっていないのに急に車が止まり、友人が無言で車外へ出て行きました。
何事かと思っていると、友人が向かった先には小さな祠があり、友人はそれに向かって拝み始めました。
友人に話を聞くと、一ヶ月前に走り屋界隈では有名なリーダー的存在の人が亡くなっていたのです。しかも、事故で頭が飛び、その頭が助手席に座っていた彼女の膝に乗るという悲惨なものだったそうです。
友人が車に戻ってくると、一緒に何かが乗ってきました。視界の端っこに常に人影があるような状態でしたが、こういった類いは大抵枕木山から離れると一緒に離れていくので特に問題はありません。
そしてその日はそのまま解散となり、その翌日友人の彼女のYさんに枕木山での事を話すと泣きだしてしまいました。
更にその翌日。Yさんから写メールが届きました。本文も何も書いていない、写真だけが添付されたメール。
写真自体はプラモデルを自慢する写真でしたが、右上の辺りに矢印スタンプが押してあり、そちらを見てみると何かが見えました。拡大してみると、おかっぱの女の子が写っており、よくよく見ると右目だけがいやに大きく陥没しているようでした。
これは危ないんじゃないかと霊感の強い友達にその写メールを転送すると「最低5体は写っている」と返信が来て青ざめました。確かによく全体を見てみると所々白いもやがかかっているように見えましたが、これが全部幽霊だったとは。
それから一週間後、私と友人、Yさん、Sさんの四人でYさんの車に乗って少し遠出をする事になりました。
遊び尽くし、帰ろうかと話す頃には深夜二時を回っていました。
Yさんの運転で、私が助手席に座り後部座席に友人とSさんの配置で帰宅する事になったのですが、途中、やけに後ろが気になって振り返ると、友人とSさんが肩を寄せ合い頭を重ねあわせながら寝ていました。
友人とYさんは恋人同士。Yさんにバレたらやばいなあと思いながらライトに照らされる夜道を眺めていると、不意にYさんがバックミラーを見て「あっ!!」と大声を上げました。
あぁ、これはバレたんだな、と思いながらも家に送ってもらい別れました。
そしてその翌日、Yさんと会う事になりバックミラーの話をしました。
「昨日、友人君とSさん肩寄せ合って寝てたもんね、あの後修羅場だったんじゃない?」
「え?!初めて知った!」
彼女がバックミラーを見て声を上げたのは後部座席の二人では無かったのです。
彼女が見たのは、ヘッドレストの間から覗くおかっぱの女の子の姿だったのです。
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