大分県中津市本耶馬渓町曽木234 青の洞門
青の洞門は、大分県中津市の耶馬渓にあるトンネルである。トンネル部分の全長は144メートル。諸国遍歴の旅に出ていた禅海和尚が、断崖絶壁に鎖をつけただけの難所で通行人が落ちて命を落とすのを見て、ノミと槌だけで30年かけて掘り抜いたといわれる。1906年には、大改修が行なわれて車両が通行できるように拡張されたため、完成当時の原型は大部分が失われている。それでも一部には、当時のノミの跡が残っている。菊池寛よって『恩讐の彼方に』という小説が発表され、全国的に有名になった。秋には見事な紅葉が見られることでも知られる。
このような有名な観光地である青の洞門だが、実は心霊スポットとしても有名である。青の洞門が出来る前、ここではたくさんの人が足を滑らせて命を落とした。そのためか、その命を落とした人たちの霊が、いまだに出ることがあるそうだ。また、この近くの岳には廃墟があり、そこは異様な雰囲気でありそこも心霊現象が起こる場所なのだそうだ。
ある女性は青の洞門へ、観光で訪れた。昼間でも薄暗く、ひんやりとしているが、観光客が多かったので何も起きることはなかった。しかし、その数年後、再び訪れたときは、時間が遅く日が沈みかけていた。中はかなり暗くなっていて、若干不気味な雰囲気が漂っていたものの、夜の雰囲気も感じたいと思って中を通った。すると、何か低い人の声のようなものが聞こえる。最初は小さかったものの、進むに連れて低く間の伸びたお経のようなものがはっきりと聞こえるようになった。怖くなった女性は途中で引き返して、そのまま帰ったそうだ。これは風かなにかが、壁に反響して人の声のように聞こえた可能性もあるが、その真相は分からない。
また別の男性は、友人と一緒に青の洞門へと向かってその先に廃墟があるのを見つけた。こんなところに廃墟があるなどということは知らなかったため、興味本位で探検してみようということになり、入ってみると急に気分が悪くなった。友人も同じく気分が悪くなり、その場の空気だけが異常な圧迫感を持っているように感じた。これは近づかない方がいいのかもしれないと思った彼らは、そのまま引き返して帰ったそうだが、その後数日間に渡って、原因不明の高熱にうなされたそうだ。一人ならば偶然と片付けられるだろうが、二人同時に体調不良になったということは、その場所の持つ霊のことと関連性があるのかもしれない。
また中で禅海和尚の槌の音を聞いたという話もある。ある男性は旅好きの友人と数人でこの青の洞門を訪れた。昼間み一度通ってみたのだが、夜間も通ってみたいと思って夜間は一人で向かってみた。ここ青の洞門は、明治時代に陸軍の車両が通れるように拡張された車道部分の下に、実際に禅海和尚が掘ったという本物の青の洞門がある。ここは明かりが少なく夜には真っ暗になる上、人もあまり通らない。おそるおそる入ってみると、中の空気はひんやりと冷たく、夏でも身震いするほどだったそうだ。ゆっくりと歩いて先に進むと、コツコツと何かの音が聞こえる。他に人が来たのだろうか、と思って後ろを見ても誰もいない。また水が落ちる音かもしれないと思ったが、もっと堅いものがぶつかりあうような音に聞こえる。不思議に思いながらも、先に進んでみると、急に横の壁から岩のかけらが崩れ落ちた。それは大きさとしては手のひらほどのかけらだったが、明らかに今削ったような跡がついていたそうだ。その男性は、これは禅海和尚の霊が削ったのかもしれないと思って、持ち帰らず中の仏様のところに置いて帰ったそうだ。
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