島根県松江市東出雲町揖屋2352
黄泉の穴・黄泉の坂が存在する出雲市
黄泉の国という言葉があるが、出雲市には黄泉の穴や黄泉の坂が存在するといわれている。
大和言葉であり日本神話の「よみのくに」の「ヨミ」に、漢語の「黄泉」の字を充てたものとされているが、意味は「地下の泉」だ。
これがのちにあの世の者という意味になったといわれている。
出雲は言わずと知れた神話が誕生した場所であり、出雲国風土記には様々な神話が記されている。
出雲市にある「猪目洞窟(いのめどうくつ)」もそのひとつで、これが黄泉の穴とされている。
出雲国風土記にはもうひとつ、黄泉の穴(=猪目洞窟・いのめどうくつ)と同様に、あの世とこの世の境目といわれている「黄泉比良坂(よもつひらさか)」と松江市にある「伊賦夜坂(いぶやざか)」が存在する。
また、美保湾と中海との間にある弓ヶ浜は、もともと「夜見ガ浜」という名の島であり、黄泉の島といわれて死者の住む場所であると出雲国風土記に記されている。夢の中で「黄泉の穴」へ行くのを見たら必ず死ぬ
黄泉の穴へ入っていく夢を見ると必ず死ぬ、といわれている。
黄泉の穴といわれている猪目洞窟は凝灰岩の絶壁の下にぽっかりと口を開けているが、洞窟といってもトンネルのようなものではない。
絶壁からの強烈な圧迫感の下で、切り取られたような穴ともいえるし、巨大な岩が覆いかぶさってできた穴ともいえる。
猪目洞窟の近くにある看板には、出雲国風土記を用いて記載がある。
「夢にこの磯の窟の辺に至れば、必ず死ぬ。故、俗人古より今に至るまで、黄泉の坂、黄泉の穴と名づくるなり」。
また、猪目洞窟の発見についての説明看板もある。
1948年、船置場とするために入口の土を取り除いた時に発見された。
洞窟は東向きで、凝灰岩の絶崖にできている。
幅30m、奥行30mで縄文時代中期の土器片、弥生時代から古墳時代までの生活跡がある。
実際に猪目洞窟で生活していたらしく、13体以上の人骨が見つかっている。
小さな祠(ほこら)としめ縄があり、祭られている。黄泉の坂・黄泉津比良坂(よもつひらさか)
日本には古事記という、古くから神々に携わる伝説を記した書物がある。
黄泉の穴と一緒に、出入口とされる黄泉の坂に関しての記載もなされている。
古事記に出てくるイザナギ(男神)とイザナミ(女神)は神様の夫婦だが、イザナミが火の神様を生んだ際に陰部へやけどを負って死んでしまう。
イザナギはイザナミを追って黄泉の国へ行くが、朽ち果て、蛆がわいて醜い姿になっているイザナミを見てしまう。
イザナミに「自分が死んでもその姿を見ないように」と言われていたが、その約束を破ってしまったイザナギ。
醜く朽ちた姿を見られたイザナミは八雷神(やくさのいかづちがみ)、黄泉醜女(よもつしこめ)らと逃げるイザナギを追う。
イザナギは黄泉の国への入口である黄泉の坂を岩で封じてしまう。
岩を挟んで向こうとこちら側、すなわち黄泉の国と現世でやり取りが行われた。
イザナミ「お前の国の人間を1日1000人殺してやる」
イザナギ「ならば、私は1日1500の産屋を建てよう」
前述の、「絶壁からの強烈な圧迫感の下で、切り取られたような穴ともいえるし、巨大な岩が覆いかぶさってできた穴」の猪目洞窟が、醜く朽ち果てた姿で追ってくるイザナミを封じた巨岩のイメージとピタリと合う。
自然のなせる技ではあるが、神話が絡んでいると解釈すれば、猪目洞窟が黄泉の穴と言われていることも頷ける。
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