ザ・ブルード 怒りの子供たちが恐ろしいです

「ザ・ブルード/怒りのメタファー」は、デビッド・クローネンバーグ監督の作品です。フランクの妻ノラは、精神に異常をきたし、研究所になっている精神病院に入院しています。サマンサ・エッガーが演じるノラは、リード演じる博士の研究の対象になっていました。博士の研究というのは、人間の怒りや憎しみなどの感情を、肉体的に具現化しようとするものでした。ノラのお腹に腫瘍ができ、やがて、異様な双子の幼児が産まれてきます。その双子こそは、ノラの怒りと憎しみの具現化された姿でした。幼児の怪物は、フランクと親しい幼稚園の先生を殺したり、娘のキャンディスを傷つけたりします。
サマンサ・エッガーの演技がすごいです。そして、怪物の双子「ザ・ブルード」は、実に恐ろしく描かれています。この映画は、クローネンバーグ監督が前妻と別れたあとで作ったものだということですが、女性の怒りや憎悪といった感情の恐ろしさ、また、子供への恐れのようなものが、よく出ているように思います。人間の感情を具現化し、人間のかたちにする、というような発想は、実にオリジナリティがあるもので、クローネンバーグでなければ思いつかないようなものだと思います。ザ・ブルードの双子たちの姿や行動のおぞましさ、恐ろしさが迫ってきて、とても怖くていやな気持ちになってくる作品です。こんな憎悪の奇形児を生み出してしまう女性の恐ろしさを描きたかったのかもしれませんが、ほんとにゾッとしながら見ていました。