エクソシスト ディレクターズカット版 CGや特撮使いまくりの残酷・恐怖シーンを見慣れてる人たちにはピンと来ないのも仕方ないかも知れない。

この映画が出来るまで「オカルト」ってのは映画の題材としてはほとんど無かったはず。まずもってそういうジャンルがなかった。ホラーはあっても、それは端っから「幽霊出てきますよ~」的な映画であり、現実世界でオカルト現象なるものが突然起きる、なんてのは無く、今あるジャパニーズホラーなんかもルーツを辿ればこの作品であると言えるだろう。
今のホラー・オカルト映画に慣れた我々なら、ベッドが揺れるとか、別な人格が乗り移ってるとか、「そりゃもうオカルトだよ」って簡単に思うのだが、この当時は普通の家で、しかも生きている人間に怪奇現象が現れると言うこと自体、とんでもなく異常な事だった。なので、この映画でも、最初は医学や精神医学での検証が繰り返し行われる。さんざん現代の科学で検査した結果、悪魔払いを勧められるという皮肉な話。これは本当に面白いストーリーだったんだねぇ。
この映画が最近の映画と異なるのは、恐怖の演出に音楽を一切使わないことだろう。有名なテーマ曲があるが、これは本編中はなんでもない場面で一瞬流れるだけ。あとはスタッフロールのBGMになってるだけだったんだね。今の映画は、音楽も恐怖シーンの重要な要素になってるだけに、私にはむしろ斬新だった。
この映画、「ホラー」では無いんだと思う。人を怖がらせるために作ったのではなく、おそらく純粋に「科学では説明しきれない、昔から存在する悪魔的な現象」の実在を訴えたかったんだろうと。
なので、淡々としたテンポで、BGMもなく進んでいくのではないか。悪魔払いにたどり着くまで、徹底的に科学的な可能性を排除するのも、そのためだろう。
最近の特撮や音楽頼みのホラーとは全然違う、人間の心の底から湧くような、精神的な怖さが表現されている良作である。