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28日後 終末に近い世界

この映画は「終末に近い世界」を舞台とし、人間の絆と、その真逆にあるようで表裏一体な所にある人間の凶暴性をテーマにした作品であろう。
マンチェスターに向かう最中、フランクとハンナの親子の絆を観たセリーナ。
ところが、封鎖地区に着いたにも関わらず、フランクは感染してしまう。
フランクは一瞬ハンナを庇うが、すぐに完全な感染者となる。
こうなるともう殺すしかないが、ジムだけでなく“物語当初では感染した仲間を殺す事に躊躇しなかった”セリーナとも、彼らといつの間にか強い絆が芽生え始め、彼らの手で殺すという行為に踏み切れなかった。
そういった絆が芽生えているが故、セリーナとハンナが軍人の「性の掃き溜め」にされる事をジムは許すはずがなく冷静さの裏にある感染者紛いの凶暴性をもって―2人ですらジムを感染者と勘違いしてしまうほど凄惨な手段で――軍人を次々殺し、そして2人を救おうとしたのだ。
一方で、その背景こそ作中には描かれてないものの、“「女」を約束した”ヘンリー少佐と彼の配下・・・いや仲間の軍人達にも絆が存在する。
また、配下の軍人の2人に対する欲情が顕わは、まさに彼らの凶暴性の本質であろうが、ヘンリーが「女」を約束したのは、希望のない未来から仲間を救うためである。
クライマックスでもジムに仲間を殺された事に対して最も強い怒りを放っていた事から彼らに対する歪んだ絆を持っていた事がうかがえる。
序盤のホロコーストな世界観、中盤のロードムービーの丁寧さ、そして終盤の荒々しさ・・・そのどれもが深く結びついて生まれた(ゾンビじゃないけど)ゾンビ映画の異色作にして快作にふさわしい。