幽霊などの超常現象でもなく、UMAなどの未確認生物でもない、和製ホラーの仄暗さと平凡な社会の裏が相俟って、所謂オバケを一切出さず、人間の狂気と人間の黒い部分だけで血も凍る恐怖を与える作品となった。ただひたすら保険金を得るべく、事故や事件に淡々と巻き込まれるある夫婦。夫婦の奥さんを演じる大竹しのぶの執念と黒い闇が、人間の狂気となって主人公に襲い掛かる。その迫真の演技は必見。人の皮を被った悪魔と言おうか、得も言われぬ恐怖を感じる。私は、当時ここまで壊れた人間を見るのが初めてだったため、軽いトラウマになり、悪夢となって数日間出てきた程だ。多感な時期に見たら完全にトラウマになってしまうんじゃないかというレベルだった。この作品には嫌悪感を感じる表現、悲壮感を感じる表現が随所にあり、作品冒頭から数々の胸糞悪い事件が起きる。そして、ありとあらゆる手を使って保険金を得ようとするあからさまな夫婦の態度が、とても胸糞悪い気分にさせる。しかしミステリー要素もあり、最初から最後まで息のつけない展開で、一気に見ることができた。奇しくも、この映画が放映されたのと同時期に、この映画の内容と類似点の多い、かの有名な『毒物混入カレー事件』が起きている。この事件の首謀者が映画の影響を受けてやったかどうかは定かではないが、要するに、こういう事が現実にもあり得るのだということが、映画を見た後からも、ジワジワ背筋を凍らせているのだ。
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