アナザヘヴン 見えない敵は宇宙人なのか、霊なのか

20代から30代の男が次々と殺されるという連続殺人事件が起こる。遺体の頭からは脳みそが取り出され、料理にされて現場に残されていた。巨漢の異常犯罪者による連続殺人として捜査していた警察の前に容疑者として現れたのは、失踪した美しい女子大生だった。
ある日純粋な悪が天から降ってきて、人から人へ次々と乗り移りながら残虐な殺人を犯していくという内容。実体を水のような形でしか持たないその「何か」は、自分は遠い未来からやってきた人であり、天国のように平和だけが続く世界に人は存在できないと言う。悪意は誰しも持っているもので、それを欠いては人間としては要られない。
「何か」の言葉からは、遠い未来、人間はその形をもう持っておらず、すべては「何か」のように、純粋で究極的な意思という観念生物になっていると考えられる。なんとなくアニメの「攻殻機動隊」の話との共通性が伺われるような話で興味深い。
映画館で見て衝撃を受けたのを覚えています。内容は単純にサイコスリラーというのでもなく、ホラーやスプラッターとも違う。脚本がよくできていて、映像もつくりこんであるので、観客はどんどんこの世界に引き込まれます。ジェットコースターみたいに走る物語の終着点は、よくあるような「解決」ではなく、観客側の現実を劇中に引き込んでの「気づき」という、唸ってしまうような脚本のうまさです。
役者さんもいいですね。ツーマンセルの刑事役に江口洋介と原田芳雄。純粋悪に唯一対抗できる純粋な愛を持つ水商売の女役に市川実和子。江口洋介がかっこよく、暗い過去を持ち、追い詰められる男という、いかにもフィクション的な存在であるのに、原田さんが肩の力を抜く笑いを持ってくるためにそれがあまり見ていて嘘っぽくはなっていない。本当のツーマンセルという感じです。
市川実和子は美人というんじゃないけれどどっか魅力があって、それは人間的な純粋さから来ているものだっていうのが最後の方でわかる。はまり役だと思います。