黒沢清監督作品。日本より海外で評価が高いらしく、カンヌで賞を貰ったり、ハリウッドではリメイクまでされている。
『リング』や『呪怨』と同じく、90年代後半~00年代初頭にかけて作られたジャパニーズホラーのひとつで、触れてはいけない邪悪な「何か」が存在し、人間や機械を介して感染・拡散していくという点も共通している。『リング』はビデオ、こちらは当時まだ創世記にあったインターネットが媒体である。
となると『自殺サークル』を思い浮かべるが、あちらほど物語は破綻しておらず、一応最終的に物語の「回答」は得られる。
霊界が現世に侵食してくるという設定自体はさほど新鮮味を感じないが、一度開いた霊界への「入り口」(=あかずの間)を「システム」(=回路)と設定し、やがてそのシステム自体が特別なものでなくなっていく(現世と霊界の区別が曖昧になり「入り口」が特殊なものでなくなる=生と死の区別がなくなる)というのはなかなか面白い発想だと思う。いわばこの世を規定する法則が根底から覆るわけで、そこにおいて人間は無力である。不気味な色に染まった東京の市街地を疾走する終盤の絶望感、終末感はなかなかのもので、単に「幽霊」やら「呪い」やら出して適当に「恐怖は終わらない」みたいに締めときゃいいだろ、てな凡百のホラーにはない迫力を醸し出している。
ところでこの映画、見た目いかにもホラーでござい、てな装いをしているが、結果的にかなりちゃんとした近未来SFになっている。
「生」と「死」にまつわるパラダイムシフトを経験した人類は、必然的に新たな地平へと踏み出さねばならないからだ(ラストでもそれが示唆されている)。
そうした性質ゆえに、本作はいわば文明論みたいな側面を持っているが、そのへんの処理がいまいち上手くいっていない印象を受ける。ストーリーが分かりにくい割に、不自然にテーマを誇示したような台詞が見られるあたり、その典型。あと時間もちょっと長いかなぁ。30分くらい短縮して欲しい。
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