吸血鬼モノに当たりなし、という僕のジンクスは、つまりはドラキュラ伝承自体があまりに有名すぎることから来ている。どんなに時代に忠実にしても、どんなに現代受けする設定にアレンジしても、吸血鬼という言葉自体が耽美でカッコいい魅力に満ちているのだから、そこから何を加えようが、それがカッコいいのは監督の手腕とは関係ないと思えてしまうからだ。試しに今度電車に乗っているときににでも、近くのおっさんが吸血鬼だと思って眺めてみるといい。何もない時と比べて三割はカッコよく見えるはずである。
そういうわけで、僕はこのロングコートの吸血鬼が二丁拳銃で大騒ぎする映画にも、一定以上の期待は寄せなかった。「マトリックスとどのぐらい違うもんかな」ぐらいが見所としては関の山だろうと考えていた。
実際それは7割ぐらいその通りで、あの兄弟がアクション志望の監督たちに与えた影響は重症の域に達してるなあなんてことをじんわり感じつつの視聴だった。
だけど、ストーリーがなかなか面白く、途中からはそれぞれの人間模様に意識が集中してしまった。
ケイト・ベッキンセール演じるセリーンが、戦闘のプロでありながら、問題に直面するとしきたりを破って泣き付いてしまうような「弱い女」なのが新しい。一見ボスの虜のようにみえる女吸血鬼のカレンも、最後まで捕え所のない行動で吸血鬼陣営をかきまわしていて面白い。どんでん返しにつぐどんでん返しのあと、最終的には敵のボスであるウリエルに観客を感情移入させる展開にはちょっと唸ってしまった。
残念なのは、これはやっぱり題材がでかいと思うんだけど、吸血鬼と狼男っていう似たような種族を対立させたせいで、本編中どちらがどちらなのか分からなくなる事がままあったこと。暗闇の攻防になってしまってからは余計にそうだった。展開だけみても十分面白いのに、実にもったいないと思う。
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