羊たちの沈黙 大好きな作品である。

大好きな作品である。
過去に何度観たか解らない程である。
この作品の原作は、かの「FBI心理捜査官」のロバート・K・レスラーが、トマス・ハリスに犯罪心理についてかなりの資料提供とアドバイスを行なっている。
それと言うのも、前作「レッドドラゴン」においてトマス・ハリスは、ただ単にロバート・K・レスラーにプロファイリングの取材をしただけで、プロファイラーの仕事を理解しないで書いてしまった故、まさに本職の目から見て、リアリティの無いプロファイラー描写を含む作品になってしまった事が、大いに不満であったからだそうだ。
フィクションで犯罪心理を的確に表現した作品というのは実は中々少ないらしい。
つまり、この作品は、多くの実在の事件の犯罪心理事情が反映されており、犯罪心理のプロが観て充分納得出来るフィクションになっていると言う事なのである。
この映画がキッカケとなって、数多のサイコサスペンスが作られたが、映像的にエスカレートしても、内容的にこの作品を越えたものは無い。
この作品は原作を裏切る事無く、原作の文章をズバッと映像で直球表現する演出をもって、大傑作となっている。
また原作の状況を映像的に創作を加えたシーンもあるが、むしろレクターというキャラの色を鮮明にする手助けになっていて、妙に説得されてしまうのは、原作を熟知した演出力のおかげである。
人間の心の向こう側とこちら側の臨界を、ここまでリアルに、映画というメディアで表現しきった事は賞賛しないではいられない。
表面的な映像の残虐さを論い、作劇構成の奥深さを感じる事をせず、ストーリーの謎解き追いかけをするだけで、この作品を評価してはいけない。
この作品の中で唯一、ありえないシークエンスがあるらしい。
ロバート・K・レスラーによると、見習い生や新人に限らず、FBI捜査官をたった一人で犯人捜査に向わせ、ましてや犯人と対峙させるなんて事は絶対にありえないそうだ。
しかし、物語として面白くなるなら、この位のフィクションは許容範囲なんだそうだ。
サイコサスペンスの最高峰である事は間違い無い。