B級だろう、と思って観てみたらかなり上品な作品だった。
黒人の住むスラムのマンションでの都市伝説の調査や、キャンディマンは実在するのか主人公の妄想なのかわからなくなる展開、主人公がフィジカルな恐怖よりも精神的に追いつめられていく過程、陳腐というより期待通りと感じる洋画ホラーらしい典型的なオチ等々、あまり怖くないことを除けばストーリーはよくできている。
肝心のキャンディマンは右手が鉤爪になってるだけで、普通のスマートな黒人男性として描かれており、はじめて登場したときには拍子抜けした。別にモンスターらしいビジュアルにしてほしかったわけではないが、せめてフードで顔を隠すとか、想像力をかきたてる姿にしてほしいとそのときは思ったのだが、メイキングを見るとなぜキャンディマンが黒人として描かれたのかがわかる。
アメリカ社会での人種差別問題というこの映画のテーマを理解すると(日本人である僕には頭では理解できてもリアルな実感はなかなか難しい)、ラストの葬式のシーンはひときわ感動的だ。
キャンディマン役のトニー・トッドのスマートなビジュアル、主人公ヴァージニア・マドセンの艶っぽさと、二人の関係の官能的な描き方(とくに顔が蜂まみれになりながらのキスシーンはエグさだけではなく、エロスもあって必見)のおかげでホラー映画としては珍しい上品な色気のある作品になっている。
グロ描写も殺戮シーンではけっこう血が流れるのだが、洋ホラーとしては控えめな方だし、哀愁を帯びた音楽も映画に品を持たせている。
とくにクライマックスの主人公が赤ん坊を助けるためにガラクタの山を登っていくシーンはBGMのおかげで悲壮でドラマチックに仕上がっており、恐怖感を煽るために音楽を使う一般的なホラー映画とは一味も二味もちがう。
この音楽とキャンディマンや彼のアジトのビジュアルのせいか、映画全体のゴシックっぽい雰囲気もグッド。
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