ラストホラームービー 発想や観点はとても面白い

発想や観点はとても面白いと思った。
近年多くなってきているフェイク・ドキュメントタッチの語り愚痴と、見ている人間自身が乱暴ではあるが、映像作品の仲の一人の住人となる方法も王道といえば王道だが、今そのような見せ方をする作家があまりいないので、逆に新鮮に映る。
あらすじ・・・『THE LAST HORROR MOVIE』と題された、一本のホラービデオ。
お決まりのストーリーが展開するなか、ノイズと共に突如画面は切り替わり、一人の青年を映し出す。レンタルビデオに重ね録りされたその映像は、彼の日常を捉えたドキュメンタリー。しかし、淡々とした口調で語られ、映し出されていくのは、にわかには信じがたい、暴力と狂気に満ちた殺人の記録だった…。
というものだが、確かに殺戮のシーンが結構多いし、はっとさせられる場面もあるが、やはりフェイクとあまりにもわかりきってしまうところが多く、ドキュメントの質感はじゃか案薄れてしまっている。
勿論、本当にしたら作品にもならないから、そこの見せ方のバランスは正直これくらいなのだろうが・・・と思ってしまった時点で、自分もこの作品の主人公のマックスが言う狂っている人間の部類に入っているのではないかと考えたときに、成る程と思った。
人間の狂気を見せる映画ではなく、人間の狂気を見ている人間に浮かび上がらせることがこの作品の目的だったのではないか?
この映画を観てこの映画を様々な視点から評すれば評するほど、その人間はこの作品の主人公よりもおぞましい発想を持っているということになる。
そして人間の論理と倫理の狭間というのはひどく曖昧でちょっとしたはずみで、聖人が狂人になりえるという警鐘を鳴らしているのではないか?
そう考えたら、いかにもなこのB級な響きと肌触りを持った作品がとても深いものになっていく。