僕は此れを美術作品だと思っている。
無論、話の構成や流れも申し分無い。
否、素晴らしい。
以後の所謂吸血鬼モノと比較しても分かり易さでは此方に軍配が上がるだろう。
最近のものは「吸血鬼」と言うスティタスが出来上がっているだけに、観覧者側に理解を求め過ぎる嫌いがある様に思う。
無声映画である。
効果音等は一切ない。
あるのは空気を表現した独自のBGMのみ。
然し、深閑とした部屋で響く扉の音を確かに聞くだろう。
吸血鬼の人とは思えない風采。
異端の生者である事を感じさせる吐息。
漸次惹き込まれ、気が付けば息を殺して画面を見ている。
無声映画ならではの表現方法は、現代の人間には新鮮に映るのでは無いだろうか。
屹度後々の映画に影響を与えたであろう名場面が幾つも見られる。
如何やら許可を取らずに制作したらしく、著作権的には問題があるらしい。
王道の「魔人ドラキュラ」よりも「吸血鬼作品」として輝きを放っているのではないかと思う。
ドラキュラ伯爵の人格に魅力を感じる方にはベラ・ルゴシ主演の「魔人ドラキュラ」を迷わず御勧めするが、退廃的で美しい画が見たい方には「吸血鬼ノスフェラトゥ」を御勧めしたい。 誰もが知っているストーリーだからこそ、異形のものがひたすら画面をうろついている異様な時間に包まれてゆく。異様な時間そのものが怪物の所有する時間なのだ。もちろん他にも面白い突っ込みどころが色々あります。戦前映画はやはり良い。
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