ビデオスルー作品の魅力と言えば、そのスケールの小ささや、まず普通の人は共感できないニッチな設定なんかがあって、これがレンタルした人の気力を見事に萎えさせるわけですが、この映画の場合「実際にあった事をパニックホラーにしてしまおう」という不謹慎極まる企画意図がまず観客の見る気を削ぎます。
アフリカはブルンジ共和国に実在した巨大ワニ「グスタブ」。民族虐殺が繰り返されるうちに人間の肉の味を覚えて以来、300人以上を食ったと言われ、立ち上がると信号機よりでかかったという、まさに化け物ワニなわけですが、これを捕獲するためにニューヨークからテレビ局が取材に来て、あとはまあお決まりのグチャグチャに、という話。
この映画のタチの悪い点は、実話と思しいのは「グスタブ」ってワニがいたとさ、という点のみだと言う所。アメリカのテレビ局員がパクパクされちゃったとか、そう言う点はまるで作り話です。さらにアフリカの内情を挿話的に盛り込みたかった監督は、「リトル・グスタブ」なる架空の過激派を作り出し、なんとも手前味噌な民族紛争を演出してしまいました。結果、モンスターパニックとして気楽に見るには民兵の虐殺シーンが重たく、かといって社会派スリラーとして見ようにもこれが完全な作り話なため、どう見たらいいのかわからず、金色に輝く草原を巨大ワニとオモシロ黒人がスローで走るシーンが妙にバカバカしい、変な映画に最後まで付き合うはめになりました。
多分ニュージーランドとかその辺でのオールロケで大自然のスケールはそれなりに豪華。CGで合成されたワニも迫力とスピード感がありみた目はパニック映画として遜色ない。が、演出が若者っぽいというか、すぐにブラックアウトしたり白く飛ばしたりノンモンにしたり、PVっぽいワンパターンさが玉にキズですね。
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