韓国の新進女性監督、イ・スヨンの凝りに凝った脚本が光る。
私はそのままストレートに見てしまったのだが、その後いくつかのサイトを覗いてみると、違った解釈が多数。
なるほど、こういう考え方もあるのか、と脚本のすごさを感じた。
ただ、解説サイトなどを見ても、いまいち納得できないというか、なぜ?と思えるところも多々ある。
もしかしたらそれらもどこかに伏線が張られ、それを見過ごしてしまっているのかもしれない。
しかし細かく張られた伏線に気づかなくても、十分映画の面白さは感じられる。
物語のあらすじがそのままネタバレに直結しているため、詳しく書くことはできないのだけど…。
結婚を目前に控えたインテリア・デザイナー、カン・ジョンウォン(パク・シニャン)は、地下鉄で幼い子供たちの死を目撃してからというもの、新居の食卓に子供たちの幽霊が頻繁に現れ始める。
そんな彼の前に現れた影のある女性。
偶然、彼女を車に乗せ家に送る途中で彼女は気を失ってしまう。
しょうがなく自分の家に連れて帰ったが彼女が帰るときに「子供たちを早くベッドに寝かせたほうがいいわよ」という言葉で彼女にも子供たちの幽霊が見えていることを知る。
そして彼女を通して、彼の失われた子供の頃の記憶を知るのだが…。
この映画をホラーとするべきか、サスペンスとするべきかは意見の分かれるところだろう。
確かに一般的なホラー映画と違い、怖いと思わせるシーンは少ない。
たぶん、一番ショッキングなのは予告編だろう。
しかしサスペンスとするには、幽霊や霊媒といった超常現象を扱っているだけに、これもまた抵抗がある。
しかし流血シーンなどは少ないものの、ショッキングな場面もいくつかある。
特に子供を持っている人、子供好きにはきついシーンが多い。
子供が何人も無残に死んでいく。
これに耐えられない人も、もしかしたらいるかもしれないので注意が必要だ。
余談だが私はペットが殺されるシーンなどは苦手だ。
人がザクザク殺されるスプラッターホラーなどは、まったく平気なのだが…。
先日読んだチューングボーンというホラー小説で、最後のほうに主人公が自分に懐いている飼い犬をなぐり殺すシーンがある。
読んでいて非常につらく、途中で中断してしまった。
話を映画にもどそう。
予告などで主役のように扱われているのが、チョン・ジヒョン。
「猟奇的な彼女」で一躍スターダムにのし上がった女優が次に選んだのがこの仕事だ。
しかし猟奇的な…のイメージで観ると期待を裏切られる。
眼の下にクマ、体中にあざだらけ、さらにノーメイクと美しさやかわいさといったものはまったく見られない。
それでも存在感という点では、さすがともいえるのだけど。
逆に際立ったのが、主人公を演じたパク・シニャンだ。
線の細い、難しい役柄だと思うが、狂気に陥る様をきちんと演じていた。
それでもつい、チョン・ジヒョンにばかり目が行ってしまうのは男の欲目だろうか。
ホラーとして観るとちょっと見ごたえがない。
しかしサスペンスとして見ると、幽霊なんかが出てきてなんだこりゃ、となってしまう。
怖さや気持ち悪さより不気味さが漂う。
論理的な謎解きより雰囲気が優先される。
そんな「損」な映画だ。
しかし単純に筋を追いかけ、ちりばめられた謎を楽しむ映画だと思えばそれなりに楽しめる。
韓国発というと韓流ばかり、と思う人はこの映画を見ると、その認識を改めさせられるだろう。
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