黒の怨 デビュー作とは思えない

「テキサスチェーンソー・ビギニング」の監督のデビュー作です。
邦題の「黒の怨」って、「くろのうらみ」って読むみたいですが、ずっと「くろのおん」って読んでました。どちらにしても内容がまったく掴めないタイトルですね。
アメリカには、子供の乳歯が抜けるとそれをお金に換えてあげる風習があるんですかね?屋根の上や縁の下に投げたりする風習なら知ってますが。歯なんか抜けても一銭にもならない日本人にしてみれば羨ましい話です。
しかし、歯をお金に交換してくれる物好きなお婆さんが、無実の罪で殺されてからはお金の換わりに死をプレゼントするようになりました、というのがこの話の発端です。簡単に金をくれる人間には十分注意した方が良い、という点には、僕も大いに賛同します。
子供の歯を金で買ってまで集めているなんで、明らかに変態ですからね!女子高生の唾液とかに金を払うオヤジとかと同じなんでしょうか。世の中には考えられないものに性的興奮を覚える人が居るようですので、注意が必要です。
主人公は子供時代からこのお婆さん(化け物)になぜかずっと付きまとわれている不幸な人です。なんでコイツの周りばっかりに居るのか?まさかすべてこいつの妄想で、犯人は彼でした!とかいう最悪のオチなのか?などと不安に思いましたが、そんなことありませんのでご安心ください。
この化け物の特徴は光を恐れるということで、主人公達は常に明るい所に居なければなりません。暗い場所に入った途端、空中からお婆さんがすっ飛んでくるわけです。
「後期高齢者なんか余裕」などと暗闇でペッティングとかしていると、一瞬で「おくられびと」になって棺桶の中というわけです。
序盤は日本の心霊ホラーを思わせるような不気味さでなかなか怖いのですが、途中からは普通のモンスターバトル風になってしまうのが惜しいです。車の中でも、暗ければ余裕で襲ってくるシーンはなかなか迫力ありましたが。
「テキチェン・ビギニング」では情け容赦無いエグい描写が連発でしたが、この映画では「ポニョ」とか言ってる子供にも見せられるおとなしさです。(ポニョの方が若干不気味なくらい。)シンプルな正統派ホラー映画として作られていて、まったくテイストが違うので、言われなければ同じ監督とは思えないでしょう。
しかし、デビュー作とは思えないほど丁寧で落ち着いた作りで、映像も美しく、違いを感じさせます。ホラー作品以外でも優れた作品が撮れる人だと思いますので、これからが期待できる監督だと言えるでしょうね。