恐怖ノ黒電話 黒電話って

黒電話って、昔家でも使ってましたが、外国ではまだあんな感じの電話が使われているんでしょうか?
なんか勝手に「昭和の日本」を感じてしまうので、外国人が使ってるのを見ると、ちょっと奇妙な感じも受けます。
ただ、ホラーやサスペンスに使うなら、断然黒電話でしょう。
あの不吉なビジュアルからは、絶対に良い知らせはかかってこないと思わせるものがあります。
「死んだ知り合いからの最後の挨拶」「NTTからの光回線乗り換えの勧誘」といった、憂鬱なお知らせばかりな感じです。
まあ、「おめでとうございます!」とか、「私のこと覚えてる?」で始まる、一見良い知らせっぽいのが一番危険なんですが・・・。
主人公は別れた旦那からストーカー被害に遭っているという、流行のタイプの女性。
薄汚い、黒電話にピッタリの安アパートに引っ越してきますが、すぐさま馴れ馴れしい隣人に付き纏われます。
こういう、気の触れた人からとにかく人気者の人っていますよね。
この人なら私を理解してくれるかもしれない、と思わせる隙があるんでしょうか。
幽霊とかも、心の優しい人の所へ行きやすいそうです。
自分のように、悩み相談を受けてもウケばかりを狙い、その場はすごく楽しく盛り上がるけれど、その後二度と誰も相談してこない感じになってしまうような人間には、幽霊もキチガイも犬も猫も、なにより女性全般がまったく近寄って来ません。
小さな子供(すぐに煙草の吸殻とかを口に入れそうになるような年頃)には、結構人気があるんですが・・・。
そんな災難ホイホイな彼女に、超常現象までもが親しげに近づいてきてしまいます。
なんと過去に同じ部屋に住んでいた女性から、時を超えてのテレフォンコール。
これだけだとSF(少し不思議)なイイ話になる可能性もあるのですが、そこは災難ホイホイな彼女、存分に気が狂ってらっしゃる女性からのご挨拶だったのです。
本当に不条理なお話です。
彼女は何も悪くないのに・・・。
しかし、これが災難というものなのでしょう。
主人公も観ている方も、最初はただのキチガイが適当な事を言ってるだけだと思います。
それはそうでしょう。
どうして過去から電話がくるの。
こういう映画を観ると、すぐに「理由が描かれない」と文句を言う人がいますが、こんなのに理由なんて付けられません。
本当はそうじゃなかった、という展開以外には。
でも、この映画はそういうサイコ系のお話じゃなく、ちゃんと過去からキッチリ電話が来ている設定です。
そこから来るアイデアこそが見せ場の映画です。
まあ、とにかく過去から電話がかかってきちゃった。
そこを呑み込めば、そこから先はなかなか面白い展開が待っています。
過去の人間を敵にまわしたら、これは恐ろしいことです。
うっかり漏らした個人情報から過去の自分や身の周りの人を突き止められ、無防備な相手に対してやりたい放題!
その結果はリアルタイムで体感することになってしまうのです。
「ルーパー」でもユニークなアイデアが映像化されていましたが、それに匹敵するエグイ描写がここにも登場します。
不条理SFな設定ですが、なかなか怖いです。
アイデア次第では、ビジュアルでなくともちゃんとゾッとさせることができるんだなあと感心しました。
ホラーっぽくないと思いきや、終盤はホラーな展開も待っています。
邦題からあまり期待できないと思うかもしれませんが、なかなかの秀作だと思いました。