エンゼルハート エンゼルハート

ミッキーローク主演のホラー+サスペンス+ロードムービーといった趣の映画。日本での劇場公開時のキャッチコピーは「人間には知ってならないことがある」主人公は私立探偵、ある日10年前に失踪した歌手の行方を探して欲しいという依頼を受けて、ニューオリンズに向かいそこのゆく先々で凄惨な殺人事件が起こる、というのが大まかなあらすじです、じゃあホーラーじゃなくて単なるサスペンスじゃないか、と思われることでしょうが、その犯人が怖い本当に恐ろしいやつなのです。ネタバレになるので詳しくは言えませんが、人間にとって一番の恐怖の対象とは何かと考えると、あまりにも身近で、それでいてよく理解していないモノに尽きるのではないでしょうか?鉄の爪をもったシルクハットを被った御仁や電気ノコギリを振り回すテキサスのあの人も怖いっちゃあ、怖いけれどどこか間抜けさがあります。この映画で向き合う恐怖とはそういったわかりやすいものではなく、話が進むにつれ、ジワジワと忍び寄ってくる性質のものです。隠れたテーマとして悪魔崇拝が仕組まれており、その不気味さを全編に渡って流れるブルースミュージックが煽っていきます。ブルースと悪魔と言えばロバート・ジョンソン、直接彼の曲が使われている訳ではないのですが、悪魔に魂を売って天才的なギターのテクニックを得たと言われる彼のエピソードとこの映画は強く結びついていますように思われます。名匠アラン・パーカーによる美しい映像とミッキーロークの快演との相乗効果により最後まで見るものを引きつける傑作です。100点満点中90点