イタリアのホラーの帝王と言えば、ダリオ・アルジェンとは外せない。
元々父親が映画関連のプロデューサー等をしており、そういう関連で
アルジェントもこの世界に足を踏み入れた。
意外にも初期の作品はホラーではなく、イタリアでジャッロと呼ばれ
る残酷ミステリーサスペンスを手掛けていた。とは言え、その手腕は
非常に高く評価され、次代を担う旗手と期待されていた。
そんなアルジェントが、ホラーに手を出すのは、実はこのサスぺリア
が初であり、経緯としては当時アルジェントが付き合っていた女性、
ダリア・ニコロディの影響が大きかった。
この映画は魔女3部作と呼ばれるが、実はアルジェント自身サスぺリア
以外、この魔女の話を継続して撮るつもりはほとんど無かったようだ。
参考にした文献はトマス・ド・ハリスの「深き深淵よりの嘆息」で、
ここに3人の魔女が登場する。
サスぺリアでは、「嘆きの母」、続くインフェルノで「溜息の母」、
そして最後サスぺリア・テルザでは「暗闇の母」と言った具合にハリ
スの原作に登場するので、観客は勝手に全ての魔女が順番に出て来る
映画を期待したに過ぎない。
アルジェントはサスぺリア以前も、映像美に徹底的に拘る監督とし
て有名だったが、このサスぺリアはその集大成とでも言うべき拘りを
見せている。フィルムは当時廃盤になっていた感度40のコダックの
特殊フィルムをわざわざ世界中を探し、中国で在庫を見付け取り寄せ
た。
このフィルムは異常に感度が低いために撮影現場は、目前が見えない
程のライティングの明るさで出演者はその暑さに参ったそうだ。
しかし、お陰で2度と観る事が出来ないであろう極彩色の美しい映像
を我々は堪能出来た。彼はセットにも拘り、近隣の国々まで足を運び
イメージに合う建築物を探した。
映像美やだけでなく、極彩色の画面は、観客に異常な不安感を与え、
より一層の不安定さと恐怖感を植え付けたことで成功をみた。
本国や、欧米各国では失神者続出で、日本では映画館前でサスぺリ
ア保険なる死亡時1000万円の金額が保証される保険まで売っていた
始末だが、死ぬかもしれない程の恐い映画とはどんな映画だろうと
不安を煽る事で更なる効果を生んだ日本の配給会社の勝利だろう。
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