2010年、ユニバーサル社が自社の扱う有名モンスターシリーズのリブートとして『ウルフマン』という映画を出した。対して『狼男』は1941年、そのリメイク元になる69年前の作品だ。
話の流れは主人公のラリーが狼に噛まれ狼男になってしまい、そして父親に殺されるが父親もまたラリーに噛まれ狼男に…というところで終わる今はやりのループものと言ってもいいだろう。この映画の見所と言えばやはり当時の技術を駆使した狼男への変身シーンと、狼男になっていく主人公の恐怖と苦悩なのだが、もう一つ着目したいところがある。この映画、出演するのは狼男だけではないのだ。
まず発端は狼がラリーを噛んだ事だが、この狼、もちろん元は人間であるし、役名はベラという。演じているのは1931年『魔人ドラキュラ』を演じたベラ・ルゴシであり30年代のスター役者である。
そして満月の夜に殺人を犯してしまう事に耐えられず、ラリーは父親に打ち明けるが父親は信じられないと、襲ってきた狼男を息子とは知らずに銀の杖で打ち殺してしまう。父親を演じるのはクロード・レインズ。彼もまた何度もアカデミー賞に輝いた名優であり、1933年に同社で『透明人間』を演じている。
いわば裏話ではあるが、この時点でも本作は『ドラキュラ』『透明人間』と、当時の怪奇映画スターが惜しげもなく出演している超豪華モンスター映画だ。それだけで何だか集客出来てしまいそうだが、『狼男』だって引けを取ってはいないのだ。
主人公のラリー・タルボットを演じるロン・チェイニーjr、彼は1925年の初代『オペラ座の怪人』等を演じた伝説の怪奇スター、ロン・チェイニーの息子であり、彼もまたこの作品で『狼男』を演じた後、新たな時代の怪奇スターとしてフランケンシュタインのモンスター、ドラキュラ、ミイラ男、といった同社の有名モンスター映画の続編を任されていくのである。
というわけで古典モンスターホラー映画の視聴を考えているなら是非本筋以外も見所満載の『狼男』をラインナップに入れてみては如何だろうか。余談ではあるがロン・チェイニーの『オペラ座の怪人』後、父親役のクロード・レインズも本作の翌々年に『オペラの怪人』で怪人を演じている。狼男は『怪人の息子』と言ってもいいのかもしれない。