黒い家 間なのに人ではない、純粋なサイコパスに出会う恐怖

映画『黒い家』は、貴志祐介による日本のホラー小説を原作としたサイコホラー映画。ごく一般的なサラリーマンである主人公若槻慎二は大手生命保険会社「昭和生命」の京都支社で保険金の査定業務を担当している。ある日、若槻は、保険加入者である菰田重徳からの呼び出しにより菰田家を訪問するが、そこで菰田家の子供が首を吊った状態で死亡しているのを発見してしまう。子供が死んでいるのに保険金がおりることを気にしている重徳に違和感を覚え、また以前より不可解な保険金請求があったことから若槻は重徳が何らかの事件に関わっていると考え、重徳の妻・幸子へ危険を知らせると共に注意を促す連絡をとる。しかしこの善意の行為が若槻の生命を脅かす切欠となってしまう。この映画では、一見異常に見える人間は、実は「異常な状態に置かれた正常な人間の行動」であり、逆に異常な事態でも淡々と生活している人間の中に実は人の形をした化け物が潜んでいたという恐怖が味わえる。彼らはうまく人間に擬態し、時にはいい顔をして、ごく普通に生活をしている。ただし、他人への共感性が薄く、人に愛情を持つことなく自分の利益の為ならば手段として人の命を奪うことすら罪悪感を覚えない。同じ人間の姿をしている、会話もできる、なのにどうしてそこまで人間として分かりあえないのか、性善説を真っ向から否定するような純粋な悪の存在に、一般人はただ恐怖と絶望しかできないと思う。映画を鑑賞し終わった後、このような人間が本当にいるのか、もし遭遇してしまったらどう対処できるのだろうか、そんなざらりとした後味の悪さの残る、よいホラー映画である。