ショッカー 笑撃のメタ?ホラー

「ショッカー」という題名のとおり、なかなかのショックを与えてくれる笑撃の傑作。

「笑撃」といっても、この手のマイナーなホラー映画にありがちな駄目な部分が笑える、というひねた笑いではない。本当の意味で笑える傑作なのだ(もちろん、なげやりな表現やら唐突な展開、ずさんな特殊効果などなどそういった見方でも十分に楽しめはするだろうが)。

監督は「エルム街の悪夢」や「スクリーム」などホラー愛好者以外にも知られた傑作も数多いウェス・クレイブン。彼は大学で教鞭もとるインテリ・ホラー映画監督であり、この作品の微妙で繊細な味わいも意図的であることは間違いない。

とにかく物語の展開がはやいので驚く。

巻頭、アメフト部の主人公が練習中に余所見をしていてポールにぶつかる、というような暢気な場面からはじまり、この箇所も定石的なハリウッド映画に対する監督の批判(というよりりはあてこすり)と思われる。

しかし、このような牧歌的なシーンの直後に主人公の家族が残虐な殺人鬼に殺されてしまい、作品はにわかにホラー映画として動き始める。ここから美少女の登場、美少女の殺害、殺人鬼の追跡・逮捕・死刑の執行・殺人鬼の悪魔(霊)化などなどストーリーはどんどん進み、あまりの展開の速さと唐突さに観客は呆気に取られてしまう。

ここまででも全長の半分ほどであり、以降も、れでもか、というアイデアが詰め込まれており、気づいたときには数え切れない死体が積み重ねられ、観客は思いもよらない地点に呆然と立ちすくんでいる、というのがこの映画である。

最後の大ねたであり、この映画の肝となるアイデアについては見てのお楽しみだが、この作品が「エルム街の悪夢 ザ・リアル・ナイトメア」や「スクリーム」シリーズで映画/映像というメディアに対する自己言及的な作品を製作したウェス・クレイブンらしく、フィルモグラフィー的には異色の作品と言える本作にまで一貫した作家性を見出すことができる。

爆笑必至の最後のアイデアだけを評するならホラー版「キートンの探偵学入門」といったところ。