反撥 染み入っていくような狂気

美容院で働くキャロルは、極度の男嫌い。一緒に暮らす姉のヘレンは、妻子持ちの男と付き合っており、時折その男が部屋に泊まって行くが、キャロルはそれが嫌で嫌でたまらない。デートをするボーイフレンドはいるが、その男にキスをされたことで、嫌悪感を抑えられなくなる。ヘレンが男と旅行に出たため、キャロルは一人家に残される。強姦される夢を見るようになり、次第にキャロルは精神的に追い詰められていく・・・。

すごい映画だった!淡々と描かれて、派手なシーンなんかはほとんどないんだけれど、染み入っていくような狂気が美しくも恐ろしい。

なぜキャロルがこれほどまでに男性を嫌悪し、そして精神を病んでいくのか、解釈は色々できるだろうけれど、キャロルは単に男性を嫌悪しているわけではなく、その実、心の奥底では性的な欲求を強く持っている。それ故に、キャロルは男性に近付きたくないと思いながらも、男性を無自覚に誘惑して引きよせてしまっているのだ。

ヒントは、家族写真にあるかな。父親に対する愛憎うずまく複雑な感情が、彼女の男性に対するアンビバレントな欲求の根源にあると思う。まあ、そこまで直接的に描かれてはいないから、そこは観る人の解釈に委ねられているんだろう。

モノクロの作品だけれど、カトリーヌ・ドヌーブの「お前、美容師だろ?」と言いたくなるような、モッサリとした金髪が画の中で際立っていて、古さは全く感じない。むしろ、モノクロなのにカラーが見えるような、そんな作品だった。