「見たら死ぬ」と言われるドッペルゲンガーだけど、果たして死ぬのはどっちなのか。本体なのか。ドッペルなのか。どっちかが死んだら再統合・再構築された自分に戻るのか。どっちでもいいんじゃないのか。どっちも“自分”なんだから… という観客の推測の幅を残したことが後半の展開にものすごく生きてると思うんです。
轢かれたあとに登場する役所広司はドッペルの方(だと思う)なんですけど、ラストでドッペルは元々の本体の方の意志を尊重するんですよ。つまり本人の欲求でもあるんだと思うんですけど。そこが結構「俺は俺の中のお前を受け入れてる。だからお前もお前の中の俺を受け入れろ。そうすれば一つに戻る」みたいなセリフとも絡んでるし、うまいなあと思いました。結果的に物語が一見キレイな方向に収束していくし。
あとはユースケ・サンタマリアと柄本明にもドッペルゲンガーがいたんじゃないかなって思わせる感じもよかったです。
個人的に凄いと思ったのは、ドッペルゲンガーと初対面したシーンが、なぜかちょっとコワイんですよ。画面はすごく明るく作ってあるし、不安定な構図を使ってるわけでもないのに、なんかコワイんです。
たぶん、役所広司の口の中に食いかけのメシが入ってるからだと思うんです。“モグモグしてる感じ”と“非日常”のアンバランスさが、リアルっぽさの演出になって怖さを生み出してるのかなあと思いました。電話中に平然と画面の後に、とか。こういう方法論でやってるシーンがたくさんあるので、怖いと思うときもあるし、当然かなり笑ったとこもありました。
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