雨けぶる街並みのシーンが多い映像の色彩、話の内容、後味にいたるまでとことんダークなこの作品はしかし非常に評価もされているサイコサスペンスであり、ホラーだ。
七つの大罪になぞらえた被害者たちと彼らを凄惨な方法で殺害する犯人。奴を追うのはどこか達観した(厭世寸前かも)定年間際のサマセットと、正義感に燃える若者のミルズの二人組みの刑事。
ミルズ役の若き日のブラッド・ピットはとても精悍かつ生意気な面構え。
犯人を捕まえてやるという意気込みに溢れていて、陰鬱で無残な事件を追っている作品中救いとなっている。
サマセットは冷静かつ思慮深く、色々な事件を見てきたのだろうなと想像させられ、いいコンビだ。
彼らは試行錯誤しながらも犯人へと近づいていくのだが、その闇に驚愕することとなる。
さて、「セブン」を語るならあのラストは欠かせないだろう。
私は観終わったあと、初めてこんな形で正義が負ける瞬間を見たのだと思った。
閉塞し荒んでいた作品世界の中で芽生えたかもしれない、きっとあれが希望なのだと視聴者が思っていたものを監督は完膚なきまでに叩き潰した。もちろん全ては計算の上だったのだろう。私たちが希望を感じたことすらも。
自分が同じような状況になったら、それでも銃口を下ろせただろうか?
分からない。だが、彼の決断は共感できてしまう。なんとも悲しい共感だ。
だが、それでいい。
打ちのめし、考えさせることこそが心に残ることだ。
そして作品としてそれを観たものに成せるならそれは名作なのだ。
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