ゾンビ大陸 アフリカン ロメロを彷彿させる原点回帰のような作品

正統派ゾンビ映画。最近のゾンビ映画は、ゾンビになったにも関わらず自我を持ち恋する乙女に会いに行くものや、死んだはずなのに突然蘇り悪い奴らを処刑して血肉を貪るものなど、いろいろなテイストのものが作られ一括りにゾンビ映画といえないほど実に多岐に渡るジャンルがある。そんな中、この『ゾンビ大陸 アフリカン』は死者が蘇りパンデミックが如くゾンビが大量発生してしまった大地からの脱出という非常にシンプルな作風でロメロを彷彿させる原点回帰のような作品だ。

エンターテイメントや笑いにはしらずにシリアスな作品なだけに緩やかなテンポだけど、その緩やかさがアフリカの大自然の空気に驚くほど合っている。真っ赤な夕日をバックに摺り足で寄ってくるゾンビの映像は数あるゾンビ映画の中でもとりわけ美しい画のひとつだろう。

ひとつひとつのつくりが非常に丁寧で緩やかなテンポに寄り添うように塵が徐々に積み重なり絶望が大きくなってくるけどわずかな希望に胸がすく想い。ゾンビ映画で泣くなんて考えてもみなかった。

エンドクレジットでキャストやクルーはもちろん、死体やゾンビといったエキストラの方もきちんとクレジットされていてなんだかほっこりした。みんなで作り上げた映画なんだということがよくわかる。

そんな想いとは裏腹にこんなB級感丸出しの邦題を付けたスタッフは何を考えているのか。原題の『THE DEAD』がシンプルで非常にいいタイトルなだけに残念で仕方ない。