結論を先に言えば、原作小説は「傑作」、映画は「佳作」だと思う。
傑作と言われてる原作付きのミステリ映画も、多くは、短編を膨らませたり、大幅に原作を改変している。
そうでない場合は、「犬神家の一族」のように、犯人当てより、ケレン味の方に重きを置いたり。
…この「ハサミ男」原作小説は異色だった。
シリアルキラー「ハサミ男」が自分を装った殺人犯を探す一人称の語りと、警察の捜査の三人称の語りが交錯して、独特の雰囲気を醸し出していた。
終盤になって明かされる、馬鹿馬鹿しいほど単純な叙述トリックは、目の肥えた識者でも引っかかった人が多いと思う。
…当然、量だけこなして、目が肥えてない自分は気持ちよく騙された。
「トリックは出来るだけ単純で馬鹿馬鹿しい方がいい」
その格言(?)に違わないトリックだったと思う。
翻って、この映画だが、最初から、このトリックはブチ壊されている。
この映画を酷評する人達は、多分、この事を一番、怒っているんじゃないかと思う。
自分も、そこをどうやってクリアーするのか興味があったので、見始めてすぐ残念に思ったが、見ている内に映画としての面白さに引き込まれていった。
登場人物も含めてひどく無機質な風景、哀切の強いサックス、ほとんどが引きの画面で表現された主人公ですら例外でない三人称視点etc…。
どうにも作家性の強い内容だから、最近の誰が演出してるのか分からない、説明セリフ多様でハイテンポの邦画が好みだと厳しいと思う。
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