デニスホッパーは「悪魔のいけにえ2」と同じ1986年の映画「ブルーベルベット」で素晴らしい赤ちゃんプレイを披露してくれた信頼できる俳優だったのだが、この映画では明らかに持て余されている。正直、この映画を作った人たちは、デニスホッパー扮するキャラクターの復讐という大きな軸を本当に描きたかったのかと疑問を抱かざる得ないわけで、デニスホッパーが出演してくれるからと浮き足立ったのか、気を使ったか、お金に困ってプロディーサーの言われるままにしたのかはわからないが、「悪魔のいけにえ」の続編として根本からこれでいいのかとトビー・フーパーを小一時間問い正したい気持ちでいっぱいなわけである。
事実抑揚された演出と、カメラワークで、殺人鬼たちの巣に迷い込んでしまった旅行者の悲劇を、無機質で、無慈悲に描いた超名作「悪魔のいけにえ」。
その「悪魔のいけにえ」の素晴らしさは、あなたが住む街、あなたの隣の部屋に殺人鬼が住んでいるかもしれないと思わせてくれるリアリティなわけで、レザーフェイスや殺人一家ではない。その添え物を楽しみたいなら「アダムスファミリー」でも観ていろと、「悪魔のいけにえ」が作られた1974年の段階でトビー・フーパーが思っていたかは定かではないけれど、その10年後に公開された「悪魔のいけにえ2」は「アダムスファミリー」みたいなコメディ以外の何者でもない。「あの頃の志は何処へ」状態なのである。
別にコメディ映画を悪く言っているわけではない。「悪魔のいけにえ」の続編でコメディをやるなと言いたいだけだ。
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