「ジョーズをいかに登場させずに恐怖を煽るのか?」
それがこの映画のテーマであり、上手いところだと思う。
まずは、被害者の死体の無残さで恐怖をあおり、そして不穏な世界観を創り上げる。そしてその不穏な世界観を忘れ去るかのように、海水浴場を楽しむ人々。しかし、そこに襲い掛かる恐怖、パニックに陥る人々。
このように前半はジョーズは登場しない。ただジョーズの影が登場するだけだ。ジョーズに対する人々の反応がジョーズの影を創り上げている。非常に上手い。
市長のビジネス優先の姿勢や、被害者の家族の怒りなど、話にリアリティを持たせ、視聴者を退屈させない。
そして後半、ジョーズ退治が始まる。主人公の警察署長が集めた二人の仲間が、それぞれのやり方でジョーズ退治を行なう。なんか最初は仲悪かったりするのに、途中から過去の話を始めて、意気投合してしまう。どう考えても死亡フラグである。
そしてジョーズの姿があらわになっていく。タル三つ使っても潜りつずけるパワー、どれほどの銛、銃弾を喰らっても怯まない体力、そして何もかも食いちぎるキバ。
前半影だったジョーズのがはっきり見える恐怖。スティーブン・スピルバーグは人の恐がらせ方を知っているな。やっぱり。
今観ても全く文句なく楽しめる、というだけではなく、70年代後半に流行ったパニック映画の嚆矢としての歴史的価値もあるし、自然や生物を題材にした博物学的側面は後の「ジュラシック・パーク」に繋がる特徴でもある。やっぱりこれも、映画史に名を残す傑作映画だと思う。
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