羊たちの沈黙 全部が尖りすぎてて逆にバランスのよさを感じる

好みのタイプの女性が出てくるからこの映画が大好きという理由以外にも好きな理由はある。

この手の残虐映画にも関わらず、格式の高さを感じることができるからである。そしてその格式の高い映画の中心にあるのが、そう我らがハンニバル・レクターである。

異常者であり、紳士である。残虐だけど、スマート。上品だけど下品。一見相反する二つの人間性が共存する存在。脱出のシーンは本当に彼の人間性を表していて、感情の高揚すら感じてしまった。このシーンを見るために映画見ているんだよとすら感じてしまった。

彼を取り巻く環境、拘束具が彼の不気味さを演出しており、小道具やセットって大切なんだなとシミジミ実感した。

そしてバッファロー・ビル。一般的異常者である。ハンニバル・レクターがフィクションであるとすれば、彼はノンフィクションの複合体。小学生男子が水泳の着替えの時にやったアレ。モザイクを使わない前の隠し方は今見ても斬新。

過去の虐待の被害者意識強さゆえに加害者になっても自己の正当性を疑おうとしないというよくある(最近は冷たい熱帯魚あたりで見かけました)設定はこのあたりが初めなのかな。知らんけど。

三幕構成のどの部分も飽きることなく観客をひきつけているこの映画。一部では「クラリスとレクターの掛け合い」、二部では「レクターの脱走」、三部では「クラリスのバッファロービルとの戦い」を描き、どこも映画の軸と足りえる。三幕全てが好き、退屈じゃないという映画体験ができる最高の映画だと思う。