白衣を着た科学者たちの穏やかな世間話から始まるので、アットホームなホラー映画で、パンケーキを口いっぱいに詰め込んで殺すアメリカ版アンパンマンみたいなのが出るホラーなのかなと思っていましたが、ミヒャエル・ハネケの『ファニー・ゲーム』を彷彿させる穏やかな嫌悪感を抱かせるタイトルロールで思わずニマニマしてしまいました。ただ、これがハネケと似通っていると思ったのはその一瞬だけであり、大きく見るとまったくの別物なのです。ハネケのような性根が腐った下衆ではなく、娯楽に徹した作りになっているので気兼ねなく楽しめます。その上、今までありそうでなかったシチュエーションを重ねることで、パニックモンスター映画の既視感がものの見事に消え失せ、ホラー映画が好きな人ほど斬新に感じるのではないでしょうか。
制作者たちがホラー映画が本当に好きなんだとよくわかる仕草がごまんとあり、特にマイケル・マイヤーズとジェイソンの複合体であるゾンビが出てくることは昇天しそうになるほど嬉しいです。さらに日本のオカルトホラーまで出てくるのでアメリカのホラーだけに特化していないのも好印象。
最近のホラー映画は黄金時代だった80年代ホラーを見て育った人が作っているのが多いからか、その時代性を汲みつつ、自分の特性も活かした作品が多いように感じます。だからといって懐古主義に走らず新しい視点で作っているものが多いです。ホラー映画ほど娯楽性も伴った挑戦的なジャンルはないと思うので、もっとスクリーンでやるようになればいいのにと切に願います。
コメントをするには会員登録が必要です