“マスターズ・オブ・ホラー”に日本人で唯一参加した三池監督が題材として選んだ岩井志麻子原作の「ぼっけえ、きょうてえ」は日本ならではといえる怪談のような話である。
怪談のようなとはいったものの幽霊が出たり摩訶不思議な現象に遭遇するわけではなく、時代設定(江戸?)や奇怪な人物がいることでおどろおどろしいなんとも言い難い妙な空気が渦巻いている。原作は岡山弁なのだが映画はアメリカ資本ということもあり英語に変わっており、その時代錯誤な使い方の甲斐もあってかより異様な雰囲気になっている。
大まかなストーリーはアメリカ人が遊女を買い取るためにやってきたのだが、その遊女は自殺しており、事情を知らせてくれた別の遊女が二転三転と事実を語っていく。はじめからけっこうヘビーな映像の連続なのだが、回を重ねるごとに目を覆いたくなるようなショッキングな映像になっていき、それを衝撃的と捉えるか目も向けられないと嫌悪感を抱くかによって評価は大きく分かれる。特に陰惨な拷問シーンは三池監督の真骨頂と言いたくなる力の入れよう。爪の間や歯茎に針を刺していくのを実に丹念に時間をかけて魅せてくれるのだが、欧米の血みどろな拷問とは違うキリキリした痛みが画面を通じて侵食していく。
“『オーディション』のミイケ”という認識が強いであろうアメリカ人に向けて作ったホラーはマスターズ・オブ・ホラーの名に恥じない強烈なインパクトを残したに違いない。アメリカ人で三池好きに会う、それはすなわち死を意味することになる。
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