おそいひと 住田さんが非常に魅力的

主演の住田さんがこの映画で演じる男は、酒ばかり飲んで若い女が大好きな、典型的なショーモナイオヤジです。

電動車椅子で移動しボイスマシーンで会話を交わすという、かなり不自由な生活を強いられそうな状態なのに、1人でどこにでも出掛けるし好きなものも食べるという随分気ままな生活です。

NHKのドキュメンタリーでは重々しく語られそうなその姿も、実に飄々としてユーモラスで憎めない感じで、最初はコメディかと思うほど笑いを誘います。

ところが、途中で「アッ、そういえばこれって殺人鬼映画だっけ!」と気づいたように、唐突に人殺しが始まります。

一応若い女性に失恋したからというキッカケはかろうじて描かれてはいますが・・・。

しかも、殺す相手が通りすがりのどうでもいいような野郎ばかりなんですね。

殺人鬼映画で殺すのは美女と相場が決まっているものですが、何故かそういう風にはなりません。

住田さんも電動車椅子から飛び降りて熱演しますが、ホラー映画的な盛り上がりにはどうしても欠けます。

この映画では、主役の住田さんが非常に魅力的に撮られているという部分においては素晴らしいと思います。

特に滑稽に、時に恐ろしく、時に叙情的に美しく撮られていて、まさに住田さんのプロモーション・ムービーと化しています。

しかし、住田さんが居ないシーンではモロに低予算自主制作映画という感じで、他の役者の方も素人っぽさが前面に出てしまっています。

前半のなんでもない生活を描いている部分はとても良かったのに、殺人鬼映画としてスタートすると色々と苦しい部分ばかりが目立ってしまいます。