この「ベニーズ・ビデオ」は割と監督の初期の作品のようで、個人的にはさほど大きなインパクトは無かった(他のよりは、という意味)のですが、作風は既に完成されています。
何を考えているか分からない不気味な少年が、豚を屠殺する武器(頭に押し当ててバン!と撃つ筒みたいなの)で、知り合ったばかりの少女を殺してしまいます。
ビデオマニアな彼はその一部始終を撮影していて、その映像を両親に見せてしまいます。
驚いた両親はどうにかその犯罪を隠蔽しようとするのですが…。
本当に上記の話をひたすら淡々と描写していくだけです。
かなり衝撃的な話なんですが、決して過剰にならない展開に、逆に落ち着かなくなってしまいます。
両親の心情などは、自分勝手ながらも納得できるものですが、少年の心だけは全く不明のままです。
何故こうなったのか、何故そうするのか。
映画にするなら、最も重要視する部分のところを、あえて全く描いていません。
監督のインタビューでこの映画を作った動機が語られていますが、それを聞くと「あえてこうした」理由が分かります。
少年犯罪について、こうするべきとか、これが理由とか、そういった事を「まるで分かった風に」描くのではなく、ただその不可解さを描いて、観るものに何かを感じさせる。
これはこの監督の作品に一貫していると思います。
なんでもないシーンで、何故か強烈に緊張感が漂うのもこの監督ならではですね。
かと思うと、なんでもないと思って油断していたシーンで衝撃的なことが行われたり。
この突発性もお化け屋敷みたいです。
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