グロテスク 丁寧な映画

初デートを満喫していたカップルが、男に突如監禁される。この映画はR−20指定だそうで、私が知る限り、恐らくR−20というのは前代未聞なんですけど、正直残酷シーンはそこまで常識外れだとは思わなかったですかね。ただ、気分は悪くなります。一見矛盾しているように感じますがどういう事かというと、目玉をくり抜かれようが、腕を切られようが、その瞬間は全然映らない。

ただ、この映画は残酷シーンをあまり見せない代わりにそれまでの過程や、リアクションで気持ち悪くさせるんです。役者の演技が相当良いですからね。嘔吐するタイミングも良いし、何かされるまでは泣き叫んでいるんですけど、案外何かされるともう黙ってしまう。ここは実際そういう場面を経験した事が当然ないんですけど、なんかとても正当なタイミングに思えて、監督は想像力が豊だなあと思って観てました。

あとカメラですね。カメラが終始“手持ち感のある手持ち”なので、臨場感みたいなものがあるし、誰かがカメラを回している感じがする。それは本来いけない事なんですけど、この映画に限っては、まあ良かったんじゃないですか。だから劇場で観るとカメラ酔いで気分悪くなりそうです。

丁寧な映画ですよね。監禁する男なんかも、単なる人を切り開いて喜ぶ異常者ではなくて、「人間の生命力を体感する事によって感動を得たい」なんて事言うから、安っぽく感じないんですよ。やってる事は切り開いて喜んでいる人間と同じなんですけどね。これが人物描写なんじゃないですか。