p2 もう少し工夫が欲しい

ビルの地下駐車場を舞台に、ひとり残業していたOLが頭のイカれた警備員に監禁され、追い回されるサスペンス。最低限の舞台設定と登場人物で作られたB級のお手本みたいな映画である。こういうの好きよ。

前半、ごく普通の日常から、駐車場内に閉じ込められる異常事態へ移行していく過程の描き方が上手い。「車が故障する」「自動ドアが開かない」「タクシーに置いていかれる」「携帯が圏外になる」と、日常的に起こりそうな些細な出来事が、徐々に選択肢を狭め、主人公を袋小路に追い詰めていく。あらゆる脱出の可能性がどんどん失われていくので、主人公に対する「なんでこいつこうしないんだよ、バカだな」というツッコミが通用しないのだ。

ただし、閉じ込められてからは文字通りひたすらキ◯ガイに追い回されるだけなので退屈。警備員役のウェス・ベントレーはいい演技しているんだが、彼が本当に単なるおかしい人で動機もクソもないんで、物語的な深みもなく、ただ逃げるだけで90分間持たせるのはやや辛い。ワンアイディアだけで残りの展開が平板、というこの物足りなさは、同じくホラー映画の『ラストサマー』とか、小説でいえば岡嶋二人の『クリスマス・イヴ』などに通じるものがある。

正しい意味でのB級サイコスリラーだが、せっかくならもうひとつ工夫が欲しい、ってことでこの点数。あ、エレベーターの水のシーンと、「犬に罪はない!」は笑いました。あそこは掛け値なしに良かったです。