おろち 人間の心理をしっかり描けている

原作、脚本が良いので、やはり面白い。女性が持つ美への執着、嫉妬心や憎しみ、ねたみ。そういうマイナスの要素の中に一瞬垣間見る事ができる、愛情や孤独感。それが最後にはもの哀しさとなって描かれ、人間というものは本当に未熟で愚かな生き物という事が、まざまざと見せつけられる。

作り手の力量が観る事が出来ますね。この原作の設定としては、29歳になると醜く変貌する血筋の話で、言ってしまえば完全に現実離れしていて、当然有り得ないんですけど、その有り得ない事がもし起こってしまったら、多分この映画のようになってしまうという説得力がかなりある。何故ならそれは、人間の心理をしっかり描けているから、という一言に尽きます。

全ては人間の心理によって物語が構成されているんですよね。こうしたら面白い、ああすれば驚くんじゃないかという物語の作り方というより、何処か登場人物がこういう風に動き、考え、行動するという、役が動き出した結果、こういう物語が出来たんじゃないかと思えるぐらい、全てに於いて無理がない。

だからこれは、オチが読めるから面白くないなどと言ってはいけない。何故なら、オチが読めるか読めないかでその映画の善し悪しを判断するのは愚の骨頂で、中身のないオチで引っ張る映画にアッと驚く事しかしてこなかったという事が容易に想像出来てしまうからだ。

登場人物は少ないですが、木村佳乃、中越典子、嶋田久作、山本太郎、いずれも経験豊富な実力派俳優陣で素晴らしかったです。