キジムナー(キジムン)は沖縄諸島周辺で伝承されてきた、伝説上の生物である。
キジムナーは妖怪で、樹木の精霊とされており、基本的には、ガジュマルの古木にいることが多いとされる。
沖縄を代表する精霊なので、これをデフォルメしたデザインの民芸品や、衣類なども数多く販売されているようだ。
キジムナーは、人間らしい生活スタイルを持った妖怪で、人間と共存する比較的友好的な妖怪として伝えられている。
姿は、「背中が真っ赤な子供」あるいは「赤髪の子供」「赤い顔の子供」だと言われているが、ほかにも、手が木の枝のように伸びているとか、一見、老人のような姿をしているが、よく見ると木そのものである、など。
土地によっては、大きい真っ黒いものであったり、大きな睾丸の持ち主などとも言われているそうだ。
そして、飛び跳ねるように動き、男女の性別もあるのだという。
大人になり、結婚すれば、子供を生んで家族連れで現れ、場合によっては、人間の家に嫁ぐこともあるという。
食べ物は、魚介類が主食で、特に魚の目玉の左目が大好きで、目玉だけがない魚の死骸があったら、それはキジムナーの食べ残しなのだという。また、グルクン(タカサゴ)の頭が好物なのだそうで、自ら海に潜って漁をするのだという。
一方では、人間の船に乗船し、共同で漁を行うとも伝えられ、ほかにも、作業を手伝ってたり、その褒美にご馳走をいただき、夕食時には、かまどの火を借りに来る、年の瀬には一緒に過ごしたりするなど、人間との関係は「ご近所さん」的な存在であるといった伝承が多いようである。
キジムナーと漁をすると、船にはたちどころに魚でいっぱいになり、キジムナーは、魚の目が大好物なので、その魚の目をすぐ食べてしまうので、取れた魚は必ず片目がないという。
人間と敵対することは、ほとんどないようだが、住処の古木を切ったり、虐げたりすると、家畜を全滅させたり、海で漁をしている船を沈めて溺死させたりするなど、一度恨みを買ってしまえば、徹底的に祟られてしまうと伝えられているようだ。
ほかにも、赤土を赤飯に見せかけ、食べさせたり、木の洞などの到底入り込めないような狭い場所に人間を閉じ込めたり、寝ている人を押さえつけたり、夜道で灯りを奪うなどの悪戯を働いたりもするという。
また、東北の座敷わらしに近い伝承もあり、キジムナーに気に入られた家は栄え、反対に嫌われた家は滅びるとも伝えられている。
キジムナーは、タコやニワトリ、熱い鍋蓋、そして放屁を嫌うので、キジムナーと縁を切るには、これらのものを使って追い払うか、キジムナーの宿っている木を焼いたり、釘を打ち込んだりすると良いのだそうだ。
しかし、ある老人が、キジムナーと仲良くなった後に、しばらくし、キジムナーの事が気味悪くなって、この方法で追い払ったのだが、その老人は三日後に死んでしまったという話もあるようである。
ほかに、キジムナーは火に関連しているという説もある。
旧暦8月10日には「キジムナー火」が出ると言って、見物人が出たという。また、原因不明の怪火も、キジムナーの火によるものとされ、家の屋根からキジムナーの火が上がると、死の予兆とされていたようだ。
昭和の時代になっても、沖縄の子供たちの間では、キジムナーの足跡を見ると言う遊びがあったという。
それによると、静かで薄暗い場所に、円を描いて、小麦粉などの白い粉を撒いて、円の中心に選考を立てて点し、呪文を唱え、そして隠れる。
20秒を数え、もとの場所に戻ると、粉の上にキジムナーの足跡がついているという。
キジムナーは、極端な性格ではあるが、悪さをしなければ、普通に分かり合える妖怪だと言えるだろう。
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