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米つきわらしとは、「カラコワラシ」「座敷ぼっこ」と、各地で呼び名の違う【座敷童子】のことである。
座敷童子は主に東北地方を中心に伝わるものだ。
家の中に住みつき、音を立てたり寝ている家人の布団を引っ張る、上に乗るなどのいたずらをする。
ある家では家人が1人で縫い物をしていたところ、隣の部屋から紙をこすり合わせるような音や鼻をすする音がした。
不思議に思ってふすまを開けたが、誰もいなかったと言う。

一般的に座敷童子は子供にしか見えない・大人にも見えるが希であるとされており、見ることは少ないと言う。
赤ら顔をした子供で、年は3歳から5歳ほど。
人に危害を加えたりはせず、いたずらをするのが好きなのだと言う。
この座敷童子が住みつく家には幸運がもたらされると伝わっている。
財に困らない家になる・家の安泰などをもたらす福の神として、大変ありがたい存在とされている。

全国的に有名なのは岩手県二戸市にある金田一温泉の座敷童子である。
旅館の奥座敷におもちゃやお菓子を大量に飾った部屋があり、この部屋によく座敷童子が出ると言うものだ。
宿泊客の中には座敷童子を見て裕福な家に嫁いだ女性や、仕事で昇進したという男性が多いことから、【女は玉の輿に乗る】【男は仕事で昇進する】といういわれがある。
ただし、宿泊したからと言って必ず見られるものではない。
泊まっても見えない人も多く、座敷童子に会えるのはごくわずかな人のみだと言う。

個人の家にいる座敷童子は、白いものが吉事の前触れとされており、赤い服・赤い顔・赤い手桶を持った座敷童は凶事のお告げとされていた。
現に赤い座敷童子を見たと言う家の者が食中毒で全滅した話もある。
また、白く細長い手で家人を手招きする種類もあり、これは「細手長手」と呼ばれ、災厄から家人を守るために手招きすると言われる。
いずれもありがたいものであり、家人たちだけでなく周りの家からも貴重に扱われるのだ。
逆に、座敷童子の去った家というのは衰退するとされる。
いつまでも居てもらえるように家人たちが座敷童子の住みつきやすい部屋を作ることもある。

二戸市では部屋の中に小豆飯を供える風習が残る地区がある。
その昔、間引く目的で殺された子供の供養をする目的で行われている。
昔は口減らしや間引くという事が全国的に多々あり、二戸では間引く子を石うすの下敷きにして殺した。
死体は墓に埋葬せず、土間や台所の下に埋めるのが一般的であった。
そのため、殺された子供の霊が夜になると土間から這い出てきていたずらをしたと言う。
いたずらをする者のほかに、ただ家の中をうろうろしている座敷童子もおり、この座敷童子は気味悪がられることが多い。
これらの子供たちを供養し、家に居つかせて繁栄させようとする風習であり、今でも子供の好きそうなものを沢山集めただけの部屋を持つ家が少なくない。

座敷童子は近年でも目撃例が多く、集団で目撃した例は明治48年である。
現在の岩手県遠野市にある小学校の1年生だけが座敷童子の姿を見た。
しかし教師や2年生以上の生徒は目撃していない。
やはり幼い子供にしか見えないと言うのはあながち間違っていないのだろう。

現在、最も有名な金田一温泉【緑風層】は、数年先まで宿泊の予約が取れない人気ぶりだ。
一目だけでも座敷童子の姿を見たいと、全国から多くの人が訪れる。
昔から座敷童子が福の神とされているのが、いまだに伝承として伝わっている証拠である。