鎌鼬(かまいたち)とは、何もない場所でふいに皮膚を切り裂かれるという事象を起こす妖怪のことである。
風の吹いている時に外を歩いていると、急に体の一部が切り裂かれているというのだ。
鎌鼬は見た目はイタチのような生き物であり、両手に鋭い鎌のような爪を持っている。
つむじ風が吹くとその風に乗ってやってきて、通りがかった人を切り裂く。
不思議なことに、切られた人は痛みを感じておらず、鎌鼬に切られたと気付くのは後になってからだという。
全国的に良く知られる妖怪であるが、東北では冷たい風そのものを鎌鼬と呼ぶ。
雪国によくあらわれるとされ、寒い時期、外で転んだ時に足に鋭い切り傷を負う事から、これが鎌鼬のせいだと言われる。
鎌鼬による傷を負った場合、古い暦を真っ黒く焦がし、それを傷口に当てるとすぐに治るとされる。
科学的な根拠が不明な治療法であることから、妖怪への対処法ととらえられても不思議ではない。
また、鎌鼬は3人組の神様であるという説もある。
1人目が人を転ばせ、2人目が皮膚を切り裂き、3人目が傷口に薬を塗るので痛みがなくすぐに治るのだという。
一瞬でこの行動をするため、人は姿も見えない空風にやられたものと思い込むという説だ。
西日本では、野山に捨てられた草切鎌が妖怪になったという説もある。
対処法や原因は様々であるが、全国的に「突然切り裂かれる現象」を鎌鼬と呼ぶのである。
江戸時代には、切られた傷口は非常に深く、骨が見えるほどのものもあったという。
中には死に至るほどのものもあり、恐れられていた。
主に下半身に傷を負うため、鎌鼬は30㎝程度しか跳ぶことができないのだと伝わっている。
また、東北は寒く冷たいため悪鬼が集まりやすいという話もある。
そのため鎌鼬が東北地方に多くあらわれるのだとする話が残っているのだ。
昔は鎌鼬は北国の者しか襲わないという文献もあり、都の者が東北へ行っても鎌鼬には切られないと信じていたようだ。
近年になってからも鎌鼬の体験談は多く、傷跡が残っている者も大勢いる。
あるテレビ番組で、科学的に鎌鼬の検証をする特集が組まれた。
「つむじ風が吹いている」「切られたことに気付かない」「後から切り傷が見られる」という3点を踏まえて検証した結果、風に巻き上げられた小石・枯葉が皮膚に当たって傷をつけたものであるという結果になっている。
また、寒い場所では皮膚が急に裂ける(ひびわれのようなもの)ことがあるので、これが原因ではないかとの仮説が立った。
しかし、実際に鎌鼬の傷跡が残る人を調べてみると、傷の深さは3ミリで全治3週間ほどの傷であった。
また、枯葉や小石が当たったのであれば本人が気づかないというのは考えにくい。
人に気付かれずに切り裂く鎌鼬の現象に一致していない。
実際に傷を負った本人の話では、傷は1週間ほどで治ったという。
鎌鼬の傷は長く病むことがないと言われるのでぴたりと当てはまっている。
医者の話では、これほどの傷が7日程度で完治したというのは考えられないと言い、実際にこのようなケースはまれだという。
検証は不完全なまま終わっており、結局、鎌鼬の正体として考えられるものは挙がったが、傷が早く治るという現象は解明できなかった。
知らないうちに切り裂かれ、いつの間にか完治している謎の傷跡は、目に見えない何者かの仕業と考えるのが妥当なのかもしれない。
鎌鼬は完全な検証ができていないため、現代までひっそり生き延びている妖怪と言えるだろう。
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