つい先日、実家(和歌山県上富田町)の母親から聞いた話。
10月22日、台風21号が紀伊半島に上陸したが、上富田町でも非常に激しい大雨が降った。町を縦貫するように富田川という二級河川が流れているが、大雨で水かさが増し、茶色い濁流が道路にまであふれそうだった。
台風の翌日、ある人が橋の上から未だに激しく流れる川の様子を眺めていると、濁流の飛沫の間から、黒い大きなものが見えた。
最初は流木かと思ったが、奇妙なことに、激しい流れに逆らって、川の上流、自分が立っている橋の方に近付いてきた。
よくよく見ると、それはどうやら動物の背中らしかった。台風一過の快晴のなか、濡れて黒く光る短い毛並みがはっきり分かった。
その生き物は、橋の下を通り過ぎ、さらに上流へと進んでいったが、そのうち水に沈んでしまい、もう姿を現さなかった。ただ、水に沈む瞬間、大きな二本の角のような物が、確かに見えたそうだ。
その人はしばらく橋の上で呆然としていたが、不意に怖くなって、家に逃げ帰ったらしい。
この話を体験したのは母親の友人で、家に帰ったあと私の母に電話をかけ、事の次第を語ったらしいです。
母は同じ話を私の祖母にもしたのですが、祖母が言うには、小さい頃、似たような話を聞かされたことがあるらしいです。
・秋祭りの時期(10月中旬)は、雨の日には富田川に絶対近付いてはいけない。大きな牛のような象のような化け物が、海から川をさかのぼって、山にやって来る。運悪くそいつに出会うと命を取られる。
和歌山には牛鬼に関する伝説が多いのですが、この話も牛鬼と何か関係してるのかもしれません。
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鏡水花様
怖い&コメントありがとうございます。基本的に妖怪というものは、不気味なもの、得体の知れないものだと思います。
暇つぶしにでもしてもらえば幸いです。引き続きよろしくお願いします。
いやあ…
妖怪と言うと、何だか怖いと言うよりもちょっと滑稽で、ニッコリ微笑んでしまうようなモノかと思いましたが、そうではないんですね(◉Д◉||)
shibroさんが嵌るのも分かる~(*≧艸≦*)
すっごい面白い!!
珍味様
怖い&コメントを頂き、ありがとうございます。
私も母との世間話の中でこの話が出てきた時、物凄く興奮しました。
目撃者→母→私と、まだ話し手の解釈など、入る余地が少ないのでリアリティがあるのかもしれません。
地元の人から聞いた話を投稿したいと思っています。今後ともよろしくお願い致します。
昔から妖怪譚は好きだったのですが、今回のお話のように、実際にあったリアルタイムの出来事として書かれると、一層関心が高まります。文章も冷静かつ客観的に事実を報告するようなスタイルで、かえってリアリティを高めてるように思えます。何だか読んでると興奮しますね^_^。他の御作も順次読ませて頂きます。
shibro様
コメントありがとうございます。数年前の台風の時も各地で土砂崩れがあり、まだ完全復旧していない部分もあります。
和歌山は牛鬼伝説の宝庫ですよ!
隣町に、雨乞いで牛の首を滝壺に付けたところがあり、そこの名前が“牛鬼谷”と言います。この辺に、牛鬼伝説のヒントがあるのではないかな、と。
作品の投稿を心待ちにしております!!
あの川は以前も土砂崩れでえらいことになってましたね。あんな大きな土砂崩れを初めて見て自然の驚異に涙が浮かんできました。今はもう立派な道ができてすいすい走れます。
牛鬼伝説・・・私もこの伝説をもとに駄作を一つ作ってます。また機会があれば投稿したいと思ってます(決して読めとは言ってませんので負担に思われないようお願いします(≧▽≦)>)
ttttti様
お読み下さり、ありがとうございます。
台風後のにごった川は、眺めていると楽しいんですが、 そのうち引きずり込まれそうな気分になります。
普段は気が付かないだけで、我々の日常生活もまだまだ怪異は潜んでいると思います。
岩坂トオルさん
怪物の噺、とても興味を惹かれました。
台風による河川の濁流という描写が、ありありと想像出来ました。
何か得体の知れない存在は、自然界にありそれが気のせいではない場合も確かにあるという、不思議な感覚に浸ることが出来ます。