祖母が、自分の母親から聞いた話。
祖母の母親(以下、曾祖母)が小さい頃なので、今から百年ほど前の話。
曾祖母の生家は、和歌山の市ノ瀬村(今の上富田町市ノ瀬)の、川沿いの集落にあった。
ある晩、曾祖母の家に、息を切らして同じ村の男が駆け込んできた。
男は青い顔で、
「そこの道でゴウラボシ(河童)と相撲を取ることになった。申し訳ないが、仏さんのご飯を食わせてくれ」と頼み込んだ。
母親も、こりゃ一大事と、仏壇から仏飯を持ってくるように曾祖母に言いつけた。
男は水で流し込むように仏飯を飲み込むと、よしっと帯を締め直し、家から出て行った。
男を心配したのか、母親と兄達がしばらくして様子を見に行った。
やがて戻ってきて母親が言うには、男は一人で誰かと話をしたり、相撲を取る真似をしていたそうだ。
母親が声をかけると、男はこう話した。
待っていたゴウラどもと、お互いに約束を取り付け、「さあ来い」とにらみ合った。
しかし不意にゴウラどもが、
「どうにもお前の目が光って怖い。今日は止めにしよう」
と怖じ気づいたようになって、残らず川の中に逃げていってしまった。
誰もいなかったと言う母親に、男が「それなら提灯でその辺を照らしてみろ」と言うのでそのとおりにすると、周りには水鳥のような足跡が確かにたくさん残っていたそうだ。
残念ながら、曾祖母は怖くてその足跡を見に行けなかったらしい。
祖母が曾祖母から聞いた話として、私に教えてくれた昔話です。
私は小さい頃にこの話を聞いたのですが、後になって、同じような話が全国的に残っていることを知りました。 とても興味深いと思います。
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鏡水花様
怖い&コメントありがとうございます。
仏飯を食べて難を逃れる話は、昔話でも結構ありますね。
私としては和歌山以外の地域の妖怪伝説がたくさん集まれば、相互に比較できて楽しいと思います。
どうもありがとうございました。
仏飯を食べると良いんですか?
もうね…岩崎さんのこの妖怪列伝。
一冊の本にまとめて欲しいくらい面白いです(ノ´∀`)ノ
何処かの出版社さん、やってくれないですかね…。
ttttti様
コメントありがとうございます。
うちの田舎では、仏様の食べたものを、おさがりでいただくということで、仏前に供えたご飯なんかは夜に食べてましたね。仏様の力を分けてもらうという感じでしょうかね。
岩坂トオルさん
仏飯を食べるのは罰当たりと田舎で教わりましたが、こういった言い伝えもあるのですね。
勉強になります。
shibro様
コメントありがとうございます。
仏飯を食べさせてはいけないというのは初めて聞きました!
昔話なんかでは、猟師が恐ろしい化け物に飲み込まれたが、昨夜仏飯を食べていたため、家に帰って来れたというのがありますね。
仏飯には、引っ張る力があって、それが良い方向に働くこともあれば、引っ張られる=あの世に行く、という解釈もあるかもしれませんね。
うろ覚えなのですが仏飯は男の人に食べさせたらいけないというのを聞いたことがあるんですが、こういう怪異と関係があるのか・・・