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私の実家は和歌山県の中山間地にあり、夜ともなれば山や川から色んな生き物の鳴き声が聞こえてくる
ところだった。

自分がまだ小さい頃の話。
夏のある夜のこと、居間でくつろいでいると、山の方から、これまで聞いたことのない声が聞こえてきた。

ギャアァ、ギャアギャアァァ、ギャアアア

発情期の猫に似ているが、もっとにごったような声で、騒がしく鳴いている。

ギャアァ、ギャアアア、ギャアアァァ

そのくせ尾を引くような、不思議な鳴き声が闇夜のなか聞こえてきた。
側にいた母親に尋ねれば、
「あれは“オギャナキ”の鳴き声だ」という。

母曰くオギャナキとは、ヨタカの別名で、近くの山から、時々鳴き声が聞こえてくるという。
それからも、私は度々オギャナキの声を耳にした。決まって夜に聞こえ、妙に物悲しく、女の悲鳴のような声で、とても怖かった。
夜中に目が覚めたときなどに聞こえると、心細くて寝られなくなることもしばしばあった。

しかし、長じてからヨタカの鳴き声を聞いてみると、オギャナキとは似ても似つかないことが分かった。 
(ヨタカはキョキョキョキョと、忙しなく鳴く)
どうにもオギャナキ=ヨタカではないらしいので、祖母に聞いてみた。

祖母曰く「ヨタカとオギャナキは全く別物」とのこと。
オギャナキの姿は誰も見たことがない(見ると不幸になる、とも)が、どうやら鳥ではあるらしい。
夜更かししている子どもを攫うとも、生まれたばかりの赤ん坊を盗むとも言われている。
実際、祖母が子どもの頃、隣の集落で、赤ん坊が夜の間に行方不明になる事件があったが、オギャナキの仕業だと噂された。
その晩、何人かの住民が、集落近くでオギャナキの不気味な鳴き声と大きな羽ばたき音を、確かに聞いたそうだ。

時々オギャナキが家の近くで鳴くことがあったが、その時は祖母は必ず戸締まりを確認し、私達に早く寝るように言ったものだった。

先日、祖母に電話したとき、オギャナキの近況を聞いてみた。
「今でも山からたまに声が聞こえるが、もうこの辺まで来ることはない。代わりにアオサギが増えた。夜に見かけると結構びっくりする」
と話していた。

徳島県にもオギャナキという声だけの妖怪が出るらしいです。地元のオギャナキも同種と思いますが、鳥だと解釈しているのは面白いと思いました。

鏡水花様
怖い&コメントありがとうございます。
ヨタカは名前こそ鷹ですが、猛禽類ではないです。愛嬌のある見た目をしてます。
子どもを攫う意味では姑獲鳥と同じモノかもしれませんね。不気味な鳴き声だったと記憶しています。
ある人はフクロウだと解釈していたり、これもよく分からないですね。

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ヨタカ…って、猛禽類なんでしょうか?
オギャナキも、そうすると猛禽類?
話しを読んでいると、頭に姑獲鳥が浮かんで来てしまうんですが…
夜にそんな声、聞きたくないかなぁ( ;∀;)
怖い…

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shibro様
コメント頂きありがとうございます。
普段、昔話などに無縁そうな人も、聞き取ると意外に面白い話を持っていることがよくあります。
聴き耳を立てて日々を過ごすと結構楽しいですよ。
今後とも、よろしくお願いします。

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自分の知らない伝説を知るのはとても嬉しいです。
岩坂さんのお祖母さんやお母さんのような方が私の身近にいてくれたらもっと豊富な人生を送れたのにと思います。

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ttttti様
コメント頂き、ありがとうございます。
お目汚し失礼しました。

土地柄なのか、私の地元には妖怪の伝承や民話が比較的豊富に語り継がれています。しかし、私の祖母達(80~90代)が、語り部としては最後の世代だとも感じます。少しでも残していきたいと思います。
ttttti様の作品、まだ全て読めていませんが、大好きです。引き続きの投稿を楽しみしております。

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岩坂さん
妖怪のカテゴリーへはお邪魔していなかったのですが、非常に興味深く怖い伝承があるのですね。
他の作品へもお邪魔させていただければと存じます。

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