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カナダ東部にあるケベック州、昔からフランス語が流通しており、公用語もフランス語と英語の二つである。独立運動を行っていることでも世界的に有名なこの地にマサウィッピ湖という大きな湖がある。カナダの中でも有名なリゾート地として知られており、秋になると木々がきれいに紅葉するなど美しい景色が広がるこの湖の周辺はいつでも多くの人々が訪れている。湖の専門ガイドやツアーも組まれている。湖畔には立派なリゾートホテルや個人の別荘が立ち並んでいるような場所である。
そんな美しい湖には一方で、怪物が住んでいるという噂がある。もともと地元の人たちのなかで目撃者がいて小さな噂となっていた。その怪物は2メートル以上はある生物で、どの図鑑にも載っていないような奇妙な姿をしていると言われていた。彼らはその怪物を「ウィッピー」と名付けて、その存在を恐れていた。現地で観光ガイドをしているフローラン・エベールも幾度となくこの怪物の姿を目撃しており、不審に思っていた。23年間のガイド経験の中で何度も見ていたので観光客にこの怪物のことを紹介することもたびたびあり、その存在を確信していた。しかし、一方で彼女の話を信じる者は少なく、ただの噂として、本当に存在するのかどうかはわからないままあった。
そんなときにその怪物の存在を確信させるような写真が撮られた。それは2005年の出来事である。撮影した人物は美しい湖の様子を観光にきていた人で、その写真を湖畔の高級ホテルのオーナーに預けていった。その写真には、黒っぽい何かの生物の頭の部分が湖面からにゅっと出てきている様子がおさめられている。撮影者の話によると、写真を撮った当時、その生物の様子はまるで巨大な蛇が湖を泳いでいるようであったという。
この写真が世に出たことがきっかけでこの湖の怪物の噂が世間に知られるようになり、今までは地元の人々によって語られているだけであったその存在が世界的に認められるようになった。高級ホテルのオーナーや観光ガイドのフローラン・エベールもその写真は、「ウィッピー」の存在を確定させるものだと主張した。
しかし、科学者たちの見解は、この写真の生物の正体はチョウザメではないか、というものである。もともとマサウィッピ湖は推進150メートルととても深く、数多くのチョウザメが住んでいると推測できるのである。実際に2メートルを超えるような巨大なチョウザメの姿を目撃した人々も確認されている。この写真もそのような大きなチョウザメの頭の部分ではないかと推測されたのだ。だが、この写真の生物の頭は、つるっと丸くなっていてチョウザメとは特徴が違うという意見もある。それは、むしろナマズの一種ではないかと推測する人もいる。さらに、ナマズにしては鼻先が長くなっているのでアザラシなどの一種では、と考える人もいる。しかし、湖などの淡水に生息するアザラシは珍しく、この湖では確認されていないのである。
このように様々な憶測が飛び交う写真であり、どの説にも疑問が残ってしまうために確定することができず、未だにその正体はわかっていない。謎の怪物「ウィッピー」は依然として謎のまま、人々の噂として湖の神秘の中にいる。